「人類の行き着く先に待つものとは?」GODZILLA 星を喰う者 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
人類の行き着く先に待つものとは?
ゴジラ・シリーズ通算第32作(アニゴジ三部作第3部)。
通常スクリーンで鑑賞。
「怪獣惑星」ではあまり動かないゴジラ(でもアニメならではの戦闘描写はとても良かった)、「決戦機動増殖都市」ではメカゴジラ詐欺(でもヴァルチャーはカッコ良かった)と、ファンとして賛否両論だったものの、最後まで観届けようと思っていました。だってゴジラを愛して止まないから。
ついについに、この時がやって参りました。待ちに待った怪獣対決です。ファンならずとも興奮必至であろう(と勝手に思っている)その対戦カードとは、ゴジラとギドラ。ポスター・ビジュアルからして「ゴジラVSキングギドラ」のオマージュであり、期待値が否応無しに膨れ上がっていきました。
人知を超えたゴジラを打倒するには、自らも人ならざるものにならなければならない。前作で提示された考えに対し、人として成すべきことがあるのではないかと苦悩するハルオ。
事態は風雲急を告げ、ビルサルドが神と崇める高次元怪獣ギドラが金色に輝く姿を現し、ゴジラとの対決になだれ込んでいきました。ハルオとメトフィエスも正面から激突!
黄金の終焉を前に、絶望的な滅びへ加速度的に事態が悪化していく中、全てに決着をつけるための壮絶な概念・思想闘争が繰り広げられました。まるでエヴァのように…
これまで幾度となくゴジラと激闘を繰り広げたキングギドラが予想だにしないアレンジを加えられて再登場しました。
このギドラ、史上最強と言っても過言では無い。「ウルトラセブン」のナースの紛いものかよ…なんて侮っていました。
ところがどっこい。私たちの知っている物理法則が通用しないのだから始末に負えません。エネルギー保存則完全無視。
視覚・聴覚では存在を認識することが出来ますが、センサーでは観測不可能。ゴジラの熱戦も通じず、触れることすら叶わないと云う幻影のような曖昧な存在で、まさに虚無。
しかし、ギドラからは対象に自由に触れることが出来ると云うチートな無双状態。なんたるもどかしさ。重力場を自在に操り、時間や空間を捻じ曲げてしまう。最強かよ!
3つの首で喰らいつき、超重量級のゴジラを軽々と持ち上げる。絶望しかなかったです。そもそもまともに戦えない。だからと言って怪獣王が負けるはずが無いと手に汗握りました。
とは言っても、メインは怪獣対決ではなく、人間とはいったいなんなのか、文明の行きつく先にあるものとは何か、と云う哲学的なテーマに終着をもたらすことでした。
宗教的な概念、哲学的な会話が渾然一体となり、壮大なテーマが浮き彫りになり引き込まれました。これまでのゴジラ映画でここまでの思索が試みられたことはありません。
過ちを犯すたびに反省し二度とするものかと一旦固く決意するものの、文明の発展と共にのど元過ぎればでさらなる高みを目指そうとするのが変えようとしても変えられぬ人間の性。
自らの首を絞め、自滅するのは時間の問題ではないのか。そんな「定められた運命」に身を委ねたのがエクシフの文明であり、メトフィエスたちの宗教の教義の根幹でした。
運命に抗おうとするハルオの決断に希望を見出すことが出来た気がしました。そんなラスト・シーンは衝撃的で、息を呑みました。概念的にゴジラを駆逐するなんて斬新過ぎる。
第1章や第2章のレビューでは「なんだかなぁ…」とか「微妙だなぁ…」みたいな感想ばかり書いていましたが、本作を観終わって本三部作全体の見方が180度変わりました。
斬新で柔軟な発想で料理してもらって、これからもシリーズをさらなる高みへどんどん押し上げていっていただきたいものです。但し、損なってはいけない部分は大事にしつつ。
[以降の鑑賞記録]
2019/05/30:Blu-ray
2020/05/02:WOWOWシネマ
※修正(2023/11/02)
いえいえ、丁寧にご教授いただきありがとうございます。
メカゴジラ関係の作品は一つも観ていなかったので、
逆に、2作目の“メカゴジラシティ”は私的には全然オッケーでした(笑)
平成ガメラシリーズの中では、私も2作目の『レギオン襲来』が一番好きです。
また観返したら、コメント欄の方にお邪魔するかもしれません。よろしくです。
ちなみに、ビルサルドはブラックホール第三惑星人が元ネタです。
この宇宙人は、「ゴジラ」シリーズでは、「ゴジラ対メカゴジラ」と「メカゴジラの逆襲」に登場します。
侵略兵器メカゴジラを開発して、地球を攻撃してきます。
だからアニゴジでも、ビルサルドはメカゴジラを開発するんですね。
「平成ガメラ三部作」、めちゃくちゃ面白いですよね!
この三部作が無かったら、「シン・ゴジラ」も誕生していなかったのではないかな、と思います。
オタクの長話が過ぎました(笑) すみません。
さすがですね(笑)「釈迦に説法」でした(^-^;)
実を言うと、私はあんまり特撮映画に詳しくありません。
『シン・ゴジラ』をきっかけに、過去作をいくつか観た程度です。
それでも小説版はすごく面白かった!
こっちを映像化してほしかったぐらいです(笑)
(余談ですけど、“エクシフ”は明らかに“X星人”が元ネタですよね。)
『大怪獣総攻撃』は、金子修介監督の名前を見て視聴しました。
syu-32さんの書かれたレビューを読んでいると、
平成ガメラシリーズを久しぶりに観返したくなってきました。
カミツレさん、お久し振りです。
コメントありがとうございます!
もちろん読みました!
めちゃくちゃ面白かったです。特撮ファンならニヤリとする小ネタが満載で、一気読みでした。
「シン・ゴジラ」と「大怪獣総攻撃」もご覧になられたんですか?
共感ありがとうございます!
両方とも大好きな作品で、幾度となく観返しています(笑)
syu-32さん、お久しぶりです。カミツレです。
なかなか観る作品がかぶることがなくて、コメントをするのも『カメラを止めるな!』の時以来ですね。
syu-32さんは、アニメゴジラシリーズの前日譚にあたるスピンオフ小説
『怪獣黙示録』と『プロジェクト・メカゴジラ』はお読みになりましたか?
小説では、1作目の『怪獣惑星』の冒頭部でさらっと流れる
「世界の各地に次々と怪獣が出現し……」という部分が詳しく書かれています。
そこでは、カマキラス、ドゴラ、ヘドラ、ダガーラ、マンダ、ビオランテ、妖星ゴラス、ガイガン……などなど
往年の東宝特撮映画に登場した怪獣たちが次から次に出てきて、大暴れします!
怪獣映画を愛するsyu-32さんなら、絶対に気に入ると思いますよ!
初めまして!レビューへのいいね、大変嬉しいです。
なのでお返しの形で、ボクもレビューを拝見しました。悔しいぐらい感じたことがダイレクトに伝わりました。ギドラも確かにヤバかったです。あれはもはやチートですよ(笑)
ボクはファンではありませんが、未だに余韻が残留していて、これまでのゴジラ映画も見てみたいと思いました。
良い意味で議論が絶えない強烈なフィナーレでした。