「美しきROCKによるEmotional Vortex」ボヘミアン・ラプソディ farさんの映画レビュー(感想・評価)
美しきROCKによるEmotional Vortex
評判につられて観てきました。
とても良かったし、とても泣けた。
鑑賞中は、ずっと気分が高揚しっぱなし。
特に後半は、もう涙腺緩みっぱなし。
しかし、胸に去来するそれら感情の渦は、映画としての作品のチカラというよりは、フレディ・マーキュリーその人の生き様とQueenの楽曲のチカラによるところ大と感じざるを得ませんでした。
では、それらを差し引くと、作品としては何が残るのか?
フレディを中心としたQueenの変遷をある程度丁寧になぞってはいるものの、掘り下げ方が弱く中途半端。
各人物像についても同様だし、詞や曲がいかにして生まれたかについても、やはり弱い。
作品世界に引き込むチカラがあり、歴史的な場面に自分も立ち会っているような気にはさせてくれる。
が、それはただその場に居るというだけで、フレディたちと何かを“共有”している感覚は乏しい。
結果として、前述の素材のチカラを差し引くと、残るのはフレディの抑えきれない性癖について──。
鑑賞直後はこちらも興奮して余韻に浸れるが、少し時間をおいて冷静になると、「この映画って結局のところ──」と首を傾げたくなってしまう。
これが料理なら、「素材の良さを活かしました」なんて言われるところなんでしょうけど、料理人なら料理の腕で勝負してほしい。
映画なら映像作品として勝負してほしい。
本作は、素材の強さを活かしきれず負けてしまった作品──そんな言葉がふと浮かびました。
とはいえ、Queenの美しくも激しいRockの名曲の数々に陶酔できるこの体験は、唯一無二といえるでしょう。
次は胸アツ応援上映で観たいと思います。