「Love of My Life」ボヘミアン・ラプソディ kkmxさんの映画レビュー(感想・評価)
Love of My Life
クイーンというロックバンドのフロントマン・フレディと、彼の恋人であり妻であり友人であるメアリー・オースティンとの関係を描いた本作『Love of My Life』は、短い尺の小品ながらも切ない余韻を残す佳作でした。
フレディにとって、メアリーは本当に唯一無二な存在なのでしょう。彼がストレートなヘテロセクシャルならば、2人は肉体的・精神的にも同じニーズを持つため、スムーズな関係を維持できたのでは、と感じます。
フレディの難しさは、バイセクシャルと言うかなんと言うか、精神的にはメアリーを求めているけれど、肉体的には求められない苦しさですよね。メアリーに「あなたはゲイよ」と言われるシーンから、メアリーとの肉体関係は不可能だったのだと思います。でも、メアリーは肉体的・精神的に愛し合いたいのですよね。2人はLove of My Life なんて曲ができちゃうぐらい精神的につながっているのに、誰が悪い訳でもないのにこの苦しみは切ない!
より相手を強く求めていたのはフレディで、別離後、互いの家でライトを点け合うシーンは胸に迫りました。乾杯するのはフレディだけで、メアリーはしない。でも、それはメアリーの健康さの表れにも思えて、悲しいけどポジティヴなイメージを受けました。メアリーはフレディとの関係に自分なりにケリをつけて、自分の人生を歩み始めたのだな、と感じさせるシーンでした。
で、フレディも反動的にポールとの関係に溺れますが、あくまでもポールはフレディにとってセフレなんですよね。精神的なつながりはない。でも、ポールにはフレディを精神的にも求めているようなフシも見えました。リムジンの中でポールは自らのセクシャリティの苦しさを吐露します。でも、フレディは受け止めない。これってけっこう残酷な関係だな、と感じました。
本作の問題点は、ジム・ハットンですかね。パーソナリティーも何も描かれてないのに、自然とフレディのステディみたいなポジションに収まっていて、何なんだ?って感じです。こういった雑な演出は映画を台無しにするのでやめてほしいです。もっと描き方があったのでは、と感じました。
プチネタバレですが、ラストにフレディのバンドが大舞台で演奏するのですが、頻繁に舞台袖にいるメアリーをカメラが抜くので、その度に胸が切なくなりました。でも、その脇には謎のジム・ハットンが…ホント、丁寧な演出をお願いします。