「「自分」をそのまま受け入れる姿に…」ボヘミアン・ラプソディ k_latchさんの映画レビュー(感想・評価)
「自分」をそのまま受け入れる姿に…
ラストのライブエイド・ステージの素晴らしさは言うまでもありませんが、当時すでに過去のヒット曲であったはずの名曲たちの歌詞が、さまざまな困難を乗り越えることになったフレディやクイーンの歴史を予見しているかのような含蓄を持っていることが、あまりにも天才的だと感じました。
歯が出た容姿、移民としてイギリスで暮らしてきたこと、バイセクシャル(ゲイ)であること、そしてHIV感染者であることへの差別や偏見を、粋がったり、強がったり、自分を誇示したり、享楽に身を任せたりすることで、乗り越えようとすればするほど、どんどん孤独の淵に追いやられ、多くのものをなくしていったフレディ。そんな彼が自らのすべてを受け入れ、自分を開き、まわりからの理解も広がったことで、安息を手にしていった物語だと解しました。
かつてはクイーンの熱心なリスナーだった私でしたが、ロック史の変化の中で、無責任な批評家にも翻弄され、いつしか彼らの音楽に距離を置き、”古いロック、かっこ悪いバンド”と勝手にレッテルを貼るようになっていました。当時の彼らの苦悩や葛藤を、想像はしつつも見ようとしてこなかった自分のことを省みることしきりでした。
50代半ばの私は、自らのこれまでを振り返り、目を開かされ、共感させられ、溢れ続ける涙を止めることができませんでした。そんな私にとっては記憶に残り続けるであろう傑作ですが、彼らに思い入れのない方は、もっとシンプルに感動できると思います。