「意外と拾い物。工夫次第で続編はもっと面白くできそう」うちの執事が言うことには Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
意外と拾い物。工夫次第で続編はもっと面白くできそう
"ご主人様"と"執事"がコンビで事件を解決・・・と聞くと、どうしても「謎解きはディナーのあとで」(2011-2012/2013)が頭をよぎる。
また、主演がジャニーズ"King & Prince"の永瀬廉と聞いて、"アイドル映画"と構えてしがいがちだが、これは拾い物。永瀬ファンでなくても十分楽しめる。
永瀬廉が演じるのは、若くして名門・烏丸家の当主を継いだ、烏丸花穎(からすま かえい)。そして花穎と同世代の青年執事の衣更月蒼馬(きさらぎ そうま=清原翔)の掛け合いが楽しい。同じ"King & Prince"の神宮寺勇太が赤目家の御曹司・赤目刻弥役を演じている。
合理化した現代社会において、執事やメイド、また貴族の生活作法など上流社会の人々を揶揄したようなプロットがウケるのは、背景に一般の格差社会の陰を感じているからかもしれない。
本作のエピソードにおいては、事件の謎解きミステリーはそれほど重要ではない。
留学先からの帰国直後に家督相続を突きつけられた花穎と同じく、先輩ベテラン執事からポジションを承継することになった衣更月。
主人と執事が、どちらも"駆け出し(新人)"というところがミソ。
確固たるアイデンティティーのなさや、互いに相手からの信頼感に不安を抱えて、なかなか距離感が縮まらない。それが烏丸家をめぐる事件をきっかけに徐々に変わっていく。一歩ずつオトナに成長していくヒューマンドラマになっている。
ついでに使用人のマナーや責任範囲、服装コードなどのエピソードもあって、勉強になる。地味に奥田瑛二が脇を固めているのが、よかった。
この面白さは、やはり原作小説のストーリーがいいということだろう。高里椎奈(たかさと しいな)の原作は全9巻もあるので、続編やドラマ版もありかも。
シネスコ画角というのも珍しい。シリーズ化には、大物ゲスト出演者(できれば華のあるヒロイン)などの工夫が必要だと思うが、東映の新たなシリーズになれば面白い。
(2019/5/19/ユナイテッドシネマ豊洲/シネスコ)