「横川駅では釜飯を必ず食べてた」まく子 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
横川駅では釜飯を必ず食べてた
最初に出てきた奇岩の風景がとても懐かしく、今では北陸新幹線が開通したため通ることもないのだと寂しく思えてきた。そんな山間にある温泉地、四万温泉が舞台。11歳の少年サトシを中心に転校生の不思議少女コズエの物語。もうちょっと大人への変化を感じる思春期作品かと思ってましたが、まさかの展開・・・
こういったストーリーは普通では記憶とともに消えさる不思議体験であるはずなのに、あっさり宇宙人だとわかる展開にしてしまった失敗。ノスタルジックな気分には全然浸れず、あ、そうなの・・・的な、結局は何を見せたい作品なのかさっぱりわからなくしているのです。
クラスメートにしても、コズエに告白する少年とか犬の飼い主ルイくんやドノの描写ももっと欲しいところ。児童文学の割には大人の浮気や夢精やキンタマについてなど、お下品な内容もあるのだから、それはもっと子供にわかるようにしなければならないでしょう。形あるものは崩れる、命あるものは死ぬ・・・それよりもソーシャルディスタンスを取る描写とかが欲しい(顔近づけすぎです)。大人目線で言えば、戦国武将が通った要所でもあるので、せっかくの城跡を軽く扱わないで、これも戦国の世に消えゆく運命だったとかの説明も欲しい。とにかく対象年齢が不明すぎる作品でした。ま、それを予感したから映画館では観なかったんですけどね・・・
西加奈子さんの他の小説は好きなんですが。これは長編のファンタジー映画にするために、演出がメチャクチャになってる印象です。コズエの告白は、「マジなの?デタラメなの?」で引っ張って、最後の最後に「マジだったかも」程度の扱いに。少年の成長物語を主軸に、心象表現たっぷり、自然撮影たっぷりにして欲しかったと。これ、根本的な方向性がダメだと思いました!