「意欲を買いたい」まく子 CBさんの映画レビュー(感想・評価)
意欲を買いたい
この話を映画化しようとした監督の意欲を買いたい。ナイストライ、と。
感想としては、叙情的と説明的の間に落ちてしまい、若干中途半端になってしまった印象だが、自然の美しさと人々の生活の中にある活気を背景に、子どもたちの素直な動きや心で、この話を描こうという狙いは面白いと思う。
「永遠でないことは不幸ではない」「変化すること、流れることこそ生命の証しである」「我々を形づくっている粒子は、ある期間で全て入れ替わる」という、この映画全体(原作全体)を貫いている考え方が、コズエの立場、サイセ祭の意味、繰り返し出てくる “撒く行為” と、一貫されて表現されることには、原作のよさだろうし、そこを崩さなかった映画の作りには、好感。
繰り返しになるが惜しむらくは、中途半端な感じになってしまったことだなあ。
新音さんは期待どおり。
新垣さん、広瀬さん、浜辺さんと来た美人女優達は、さらに次の世代も万全ということでしょう。
今14歳、数年後の作品は今から楽しみだ。ハジメを演じた15歳の山崎さんとともに、彼らが今後もどうかよい作品に出会えますように。
(彼らは誕生日が12/10と同じなんだ!奇遇な)
最後に、父ちゃんがクズだということが、この全体の話の中でどう重要なのかだけは、わからなかった。原作を読んでくるので、またいずれ、補足します。
ちなみに、「変化すること、流れることこそ生命の証しである」という考え方については、生物学者の福岡伸一先生が「生物と無生物のあいだ」や「動的平衡」といった本を書かれているので、興味ある方は触れてみてください。
原作を読んだ時、西加奈子さんもきっと福岡先生の著作を読んで、もしかしたら対談とかもされて触発されているのかな、と思いました。
そして、この映画を映像化するのはしんどいだろうな、と感じたので、監督のチャレンジ精神に敬意を払うという点も大いに共感します。
個人的には原作は、少年の成長物語などではなく、人(脳の働きの神秘性)を信じる、ということの意味を読者に考えさせることがテーマのひとつなのかな、と思っています。