「「無職には可能性しかない!」と、はっキリ言えるカナ?」青の帰り道 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
「無職には可能性しかない!」と、はっキリ言えるカナ?
2008年の高校生活最後の夏休み。河原での花火、タツオの誕生日、タツオとカナの歌、若い7人の物語がそこから始まった。父親が開業医ということもあり、医大受験に燃えながらもギターを弾くことを忘れないタツオ。そして彼に作曲を教えてもらったカナは上京してレコード会社に売り込むものの、やりたくもないニンジンの着ぐるみで“無添加カナコ”として有名になってしまう。そしてマネージャーを務めるキリはアート写真家と名乗る男に騙され同棲することに。
もし不幸とか失敗とかツマヅキの疫病神がいるのなら、彼らに次々とおんぶされ、挫折感を味わわせながら消えてゆくのだろう。順風満帆なんて言葉は彼らには似合わない。というより、20歳前後の若者にはすべて似つかわしくないのだ。オッサンになってみて、「順風マンタン」などと威張って言う大人もいるんだし、そんなものは30過ぎてから考えればいい。そんな物語だと感じた。
できちゃった婚をした二人を除けば、他はみな挫折する。銅線泥棒してクビになったり、でかいことをするとか言いつつオレオレ詐欺をするリョウ。進学してサラリーマンになるも営業が大変だと気付くコウタ。彼らも世の中の流れを知らずに人生を歩んでいくのだが、北京オリンピックから中国バブル、民主党への政権交代、東日本大震災や原発再稼働反対デモなど、世の中も変化しつつあるんだよと、彼らを大人目線で見守ってるところがいい。さらに、カナの住む部屋は東京タワーもスカイツリーも見えるという変化の真ん中に位置しているところが上手い設定だと思う。
仲間の一人が死んでから大きく葛藤が生まれ、すでに仲良しグループではなくなっていることに気付く面々。20歳を過ぎると、人間関係がややこしくなったり、親がどれだけ自分を育ててくれたのかを理解する年齢でもあるのだ。だけど、ずっと友達なんだよ!それを忘れちゃだめだと訴えてくるストーリー。
残念なのはテーマ曲でもある「青の帰り道」の歌詞がださいこと。これじゃ一発目でメジャーデビューはできない。誰でも通る道、青い高校生時代をもっと懐かしむ曲にしてもらいたかったと思う。あと、盗作疑惑とかは甘すぎる気がする。一応無添加カナコとしてメジャーになったんだから、ネットで聴いてもらう手段はいくらでもあると思うのに・・・リョウが最後に殴ったのはあの嫌味なプロデューサーだよね?どこで捕まって保険解約になったのかが気になります。