「要らなくはない。」Diner ダイナー KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
要らなくはない。
必要だと、きっぱり言い切ってはくれないけど、身を賭した行動から滲み出る想いの強さに打たれる。
殺し屋がモノを喰う。生と死の重なる場所、ダイナーでの一触即発物語。
色とりどりの料理や食材は出てくれど、腹は満たされない映画だった。
残虐に振り切ってくれるわけはなく、殺し屋たちにあるべき緊迫感は薄く、多種多様なキャラの魅力は活かしきれず、ストーリーの焦点の絞りが甘い。
この映画のどこに重きを置いたのか、それを探し惑ううちに終わってしまった感は否めない。
極彩色で装飾過多な美術とビジュアルにテンション上がって強制的に魅入られ、飽きることはなかったので一安心。
次々と現れては去っていくゴテゴテしたキャラ達も魅力的で、彼らが何をしでかしてくれるかとドキドキできた。
舞台調の冒頭演出は面白いけれど、モノローグだけでカナコの空虚さを掴むには若干物足りない。
しかし、いつも色のない瞳でオドオドしていたカナコがある事件を切欠に目に力を入れて動き出す様にだんだん惹きこまれていった。
外連味たっぷりのキャラ渋滞の中、カナコの「普通の女の子」感が引き立っていて良かった。まあ普通ではありえない可愛さなんだけど。
誰も自分を必要としないなら、まず自分で自分を必要とし価値を決める。
今まで逃げてきたモノはこの先しつこく付きまとってくるから、面と向かってみる。
自分のために生きることを始めた時の柔らかな表情があまりにも綺麗で、急にジーンとしてしまった。
そして隣にいて欲しい人の存在。
ずっとオオバカナコにゴリゴリに移入しながら観ていたので、ラストシーンは胸に激しく刺さってきた。ありがとうございます…。
何よりもボンベロが格好良くて、そのクールビューティーかつ他を寄せ付けない佇まいに終始焦がれていた。
この店の王だと豪語するまでの威厳がある。
個性豊かすぎる客を華麗にさばく手腕にメロり、食材を華麗に調理する手付きにメロってしまう。
しかしどうしても、殺し屋たちの殺し屋たる残酷性やその狂気をもっともっと味わいたかったと思う。
明らかに頭おかしいキッドの解体シーンはそのまま生で見たいし、クライマックスに戦闘を繰り広げるキャラはわりと突然現れるのでなんだか乗り切れない。
優しいスキンの常軌を逸した行動はパンチがあって良い描き方だった。
お情け程度のドラマを仕込んだエンターテイメントよりも、血みどろ内臓グチャグチャのバイオレンス・スリラーの方が個人的には圧倒的に好み。
いやそんなこと、この製作陣出演者で期待なんてしていなかったけれども。
この映画を純粋に楽しみたくて、原作を買ったまま読んでいなくて良かった。読んでいたら文句しか言えなかったかもしれない。平山夢明氏は裏切らない。明日読もうかな。
ただどうしても私は、ボンベロないし藤原竜也に対して全身でドキドキし、目を奪われていたので、映画としてあーだこーだと言いつつ、どうしたって、何だかんだで、楽しんで観られたので、オールオッケー。
2019.7.5 再鑑賞 追記
募る期待寄せる想いが一旦消化された分、初見時よりも楽しめた。
料理の美しさがクローズアップされる反面、それが美味しそうに見えるシーンは少なかった。
全体の映像演出のせいもあるけど、むしろ毒々しく、どこかグロテスクな印象。
食材同士がソースに塗れ擦れ合いぐちゃっと鳴る音なんてまさに。
内なる欲望を意識して料理すれば良いのね。学びました、若。でもあのハンバーガーは到底口に入りきらないでしょう。
エビとマンゴーに丸々した何かのソースをかけた何かが気になる。どんな味がするものか。
無礼図御一行のコテコテな宝塚フューチャー、好き。
美しくかっこよくてときめいた。
真琴つばさに気付いた時、その目に射られてちょっと息が苦しくなるほどだった。
チカーノ的なブロ御一行もハイテンションで好き。
2019.7.5 再々鑑賞 追記
慣れた。というかちょっと中毒になってきた。一日三回は体力的にはキツいが、脳に擦り込むにはもってこい。
カナコは最初からわりとピンチを脱する力や生きようともがく力があったことに気付く。
So You!!!カウボーイ&ディーディーのキャラが好き。チューイングガムキッス、濃厚。
キャラの難しい名前をご丁寧に表記しているのはいいんだけど、フォントがエキセントリックでかなり読みづらい。
吉村界人演じるキャラがカナコに言う捨て台詞好き。そんなわけないでしょ。
監督の色が濃いのは面白いもので、受け手によって印象は正反対だろうと思う。
蜷川幸雄と藤原竜也を並べたショットは、個人的な思い入れとしては相当胸熱なものだけど、私情が強いように感じて映画のノイズになってしまったように思える。
彼らの関係を知らなければどうってことないんだけどね。
師をバックに、自身にも当てはまるセリフを言う藤原竜也が印象的。その通りだよね。
改めて、美術や衣装に目を奪われた。
あの超絶ポップなメイド服をボンベロが選び着せてるのかと思うと苦笑いしてしまうが。
クールな顔してどんな趣味よ。
ボンベロの着るコック服のシルエットは最高だし、マリアの色気ムンムン花魁風着物も良かった。
三回目ともなると少し気も緩んできて、自分の欲望をちょいと混ぜて若干邪な妄想を時折挟みながら観ていた。
実に美味しかった。ご馳走さまでした。
(まあ当たらないだろうと思って応募した舞台挨拶回に二回分当選し、また座席への強いこだわりから舞台挨拶回の前に鑑賞したので、一日三連続ダイナーという狂ってやがるスケジュールになった次第。)
反応のされ方が面白くて笑っちゃいました笑
三回連続で観ると台詞やら場面やら音楽やらが嫌でも叩き込まれるので…。
スキンの話し方がとても好きです。
砂糖の一粒までが私に従…いや全く王とかではないので、ゆるく扱ってください笑
あぁ~ん、いやぁん、バカバカバカ、お恥ずかしいぃぃぃ(^。^;)
「要らなくはない。」は、ボンベロの言葉だったのですね(*_*)
で、「・・・・・・なかったと思うよ。」が、カナコと最初の出逢いの場面で、スキンが言ったのですね☆
KinAさん、ご教授いただき助かります。ありがとうございます。ひれ伏し、絶対服従させていただきまーす(^_^)/
『KinA様は、映画.comレビュー場の王だっ!!!』って叫びそーになっちゃいますワ(^_-)-☆
命を奪うことを仕事にする人たちが命を繋ぐ行為である食を楽しむ場の、ちょっとチグハグで絶妙なバランスが良かったですよね。
お褒め頂きありがとうございます!ぜひ使ってください!
カナコは結構生きることにしがみついてましたから、空虚だと言いつつ咄嗟にそうできる、そうしようとする人は自分の価値に気付くと強いですよね。
目線や立場の違いで正しさの形は変わりますし。
今の自分ができる努力、いや本当その通りですね!仕事でも人間関係でも当てはまりますね。
そして…「要らなくはない。」はボンベロの言葉です!笑 劇中で二回言ってました。
藤原竜也ないしボンベロにそんなこと言われたら死んでもしがみついちゃいますね。好きです。ここで働きたいです。
スキンは「要らなくはなかったと思うよ。」だったかな!
あぁぁっ!
『要らなくはない』
って、SKINのセリフでしたよねン~☆
ワタクチも、“居場所がない、役に立たない、ダメダメな人間なんですぅ(;_;)”って憔悴しきってる子に、カッコよく言ってみたくなりまちたぁー(^_^)v
相も変わらず、KinAさんレビューは、映画を引き立たせてくれて大助かりでーす!
ダイナー・・・、
KinAさんの云う『殺し屋がモノ喰う生と死の重なる場所』という視点で観させてもらったので、オモロイ設定だわぁんンン~♬って映画の世界に没入できましたヨ(^_^)/
しっかし、この作品セット観(カット、ショット、シーン、シークウェンス?)を、「極彩色で装飾過多な美術とビジュアル」と表現するところがイイぃーっ!我が同胞どもへの映画概要説明時に使わせて貰いまーす☆パクリっ(^O^)
わたし、この作品からは、(KinAさんも述べていらっしゃいますが)、「役に立つor立たない」なーんて、誰にも解らない!まずは、自分で自分を必要とし価値を決めよーよ!って感じさせられましたワ☆
ひねくれた考えですが、優秀な発明や処理能力で生産性を上げる事で、環境破壊を加速させたり、誰かを悲しませたり、地球を破滅に向かわせている事だってありますもーんねー(^_^)/
まずは自分を責めるのを止めて、今の場所でなんだかんだ「自分のできる努力」をしてみて、「間違ったら、ミスしたら、後悔した!」と思ったら「何回でもやり直せばいい」と・・・、そういうことを想いながら、観てましたぁ~♬
はいっ!藤原竜也、ほぉーんとっ、カックイイぃーですよねー☆演技力も素晴らしいっ!ウットリぃー(*^_^*)
私が参加した一度目の舞台挨拶には窪田さんいました!
藤原竜也となんかじゃれ合ってて最高でした笑
ぜひお早目に観てくださいませ。
脚本と夢明節にはあまり過度な期待なさらず、ゆるりとお楽しみいただけますように。
一日三回はすごい…そして舞台挨拶うらやましい!!
窪田正孝さんはいましたか?w
自分も蜷川実花さんの世界観が好きなので楽しみにしてます。
このレビュー読んだら早く観なきゃ!と思いました。