大人のためのグリム童話 手をなくした少女のレビュー・感想・評価
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少ない線で最大の効果を発揮する、芳醇なアニメ表現
映画.comのレビューには「印象」のアイコンがいくつも用意されているが、恥ずかしながらこの映画の印象を、三つ選べるとしても、何かに限定することができない。しかし、この映画には本当に心を揺さぶられたし、単純なようでいて奥行きがあり、時に官能的なビジュアルに魅せられずにいられなかった。
「クリプトキノグラフィー」という監督が編み出したアニメ手法については、ネット検索すると多くの記事が解説してくれている。専門的なことまではわからないが、とにかく最小限の線だけで、こんなに豊かな世界が作れること、残酷さも美しさも等価に描けること、作品を味わうのにいささかの不便も感じなくなったことに驚いた。誰にでもできることではない。本当に絵を動かせるひとだからこそ成し得た省略なのだろう。
そして、原作であるグリム童話から逸脱していくラストに込められた「解き放たれてどこまでもゆけ!」という想いに心底感動させられたのです。
母と息子、並んで野ぐそ
去年観た『ゴッホ 最期の手紙』も凄く凝ったアニメーションだったけど、このグリム童話も凄い。ゴッホは125名の画家がゴッホタッチで描いた62450枚にも及ぶ油絵を基にして作られた作品だが、こちらは真逆ともいうべき、一人で全ての作画を担い、「クリプトキノグラフィー」と呼ぶ独特の映像表現でアニメ化したもの。最初は雑な水彩画といった印象も受けるが、時間が経つうちに絵の中へとのめり込んでる自分がいた。
原作ストーリーはまったく知らなかったので、絵もストーリーも楽しんでしまいました。黄金に目がくらみ、リンゴの木を売ったつもりが自分の娘を差し出してしまう。そんな悪魔は、子供向けのはずなのに、悪魔は下半身丸出しにしてるし、目を覆いたくなりました(うそです)。少女にしても、王子と結婚し、子供を産むまで、かなりリアルに描かれてます。乳からおっぱいが飛びまくるところでは、なんだか喜んでいるようにも思えました。城から逃げ出し、ちょっと成長した息子と一緒にうんこするし、超自然児に育てるんだなと、ほのぼのしてきました。
悪魔にもらった黄金。マヌケな父親はどう使うつもりだったのでしょう?まさか全部水を買うために?結局は首つって死んでしまったようだけど、金よりも大切なものに気づかなかったんでしょうね。
水彩アニメ
というジャンルはないんだろうが、高畑勲のかぐや姫の物語と通じるようなかなり個性的なアート作品である。ストーリーはグリム童話の一つとのことだが、確かにこの内容は小さいお友達にはキツいかも知れない。そもそもの原因の父親と悪魔との契約であっても、はっきりと悪魔は娘が欲しいとは言っていないしね。あれは騙しだろうと思うと、今の詐欺事件に通じる部分なのかな?
まぁでもそこからの父親の欲に塗れた行動は寓話とは言えなかなかリアリティがあり、迫真である。それをこういうアニメーションで表現するという技術と方法は素晴らしいと思う。素晴らしいと言えば、かなり大きい音で聴覚効果を表現している点。画以外は、かなりリアリティを追求していると強く感じた。
そしてリアリティと言えば、排泄行為や、出産行為、そして母乳の迸らせ方等々、通常はこういうシーンはあまり日本では演出しないものだが、こういうところにフランスの表現の深さを感じ取れる。
クライマックスでの、三人が蝶となって飛び出すシーンは、自分なりの解釈とすればもうこの三人は以前の段階で亡くなっていて、その魂が三人を巡り合わせたという事だと思うのだが、飛躍しすぎかな?それ位、ラストの幻想的なオチは突拍子もなかったが・・・
まぁ、寓話なのだから目くじら立てず、理不尽にも手を斧で切られるというショッキングな出来事からのドラマティックさを叙情感をもって没入すればよいと思う。
作画がすごい
絵がめちゃくちゃ抽象的で、最初は状況把握するのに時間かかった💦でも色とかもそんな使ってないし線もざっくりなのにちゃんと世界観が分かるのがすごいなぁ。
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最後の終わり方も今っぽくて好き。元のグリムはあのまま王子と城に戻って終わるらしいけど、新しい場所を探しに王子が主人公に着いていくのが良い。
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これからの時代家庭を守るのは必ずしも男じゃないよね、ということを改めて実感しました😊😊.
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