「軍隊は国民を守らない」沖縄スパイ戦史 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
軍隊は国民を守らない
「鉄血勤皇隊」や「防衛隊」についてはよく知られているが、沖縄本島北部で組織されていた秘匿部隊「護郷隊」については知られていない。陸軍中野学校で鍛えられた将校が中心となり、地元の10代半ばの少年を中心にしたゲリラ部隊、スパイ部隊なのだ。三上、大矢両監督が生存者や遺族の方たちに直接インタビューして、その実態が見えてくる。
約1000人からなる「護郷隊」は村上中尉、岩波中尉が組織し、迫りくる米軍の情報を入手したり、食糧庫を爆破するなどの任務を負っていた。中には、わざと捕虜になりガソリンに火をつけたり爆破したりする兵士もいたそうだ。現在のアフリカでも少年が銃を持つ光景や、イスラム過激派の自爆テロなんかを想像すればわかりやすい。慰霊碑の前では護郷隊の歌を歌ったりするが、内容は天皇に身を捧げるというものだ・・・
二つ目のテーマとして、八重山諸島におけるマラリア事件。波照間島に一人の山下虎雄という教師がやってくるが、実は教員を指導する軍人だった。沖縄戦が間近になったとき、住民1400人教が西表島へと強制的に移住させられ、劣悪な環境の中でマラリアに感染。500人ほどが亡くなった話だ。山下というのも偽名。日本刀を隠し持っていた等、まるでミステリーのような実話には身震いしてしまうほど。
そして三つ目は敗残兵となった兵が住民に協力を要請して「国士隊」を組織させたという話。これは現在においても口をつぐんでいる人が加害者・被害者ともにいることで、全貌まで解明できない難しさがあるが、とにかく戦争協力、住民相互の監視、スパイ容疑の者を射殺・虐殺、日本軍の非道さを思い知らされる内容でした。死んだ人間は全て敵に殺されたという戦死扱い。捕虜になったり、英語を話せたりしただけで友軍に殺されたそうだ。およそ100人。
日本軍は軍機保護法を根拠に、そうした日本人殺しもできる時代だった。負傷して足枷になる兵だって銃殺され、一般人さえも犠牲になる。軍は国民を守るのではなく、基地を守り、敵を倒すこと、国体護持することが基本。今の自衛隊はどうなのか?という突っ込んだところまで監督は描くのですが、結論付けてはいない。特定秘密保護法が成立してしまったため、そうなる可能性が高いということだけはハッキリしていた。もちろん有事になった際なのだが・・・