「悲恋を美化して涙を搾り取ろうとするありがちな邦画の運命」フォルトゥナの瞳 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
悲恋を美化して涙を搾り取ろうとするありがちな邦画の運命
「俺、人の運命が見えるんだ」
「あ、今、その力で君の運命を変えたよ」
…と、ナンパには持ってこいだが、主人公の慎一郎は本当にそんな不思議な能力を持っている。
幼い頃の飛行機事故で数少ない生存者となったものの、家族を失い、不思議な能力が。
死が間近の人が透けて見える“フォルトゥナの瞳”。
ファンタスティックでミステリアス。百田尚樹の小説の映画化。
そんな能力に苦悩しながら、色の無いような日々の中、“偶然”出会った女性・葵。
お互い恋に落ち、ようやく出会えた愛する喜びと幸せ。
恋愛映画の名手・三木孝浩監督と、神木隆之介と有村架純が初の“恋人役”で、瑞々しい純愛ストーリー。
が、ある日、慎一郎は見えてしまう。
葵が透け、“死の運命”が迫っている事を…。
愛する人を死ぬ運命から救いたい。
が、この手の映画の絶対的ルール。どんなに悲しく辛い運命になろうとも、決してその運命を変えてはならない。
変えれば、必ず代償が。よくあるパターンでは当初の運命よりさらに残酷な運命が相手を襲うが、本作は自分の身に。
相手の運命か、自分の命か。
そもそも、何故こんな残酷とも言える能力が自分に…?
もし自分にこんな能力があったら、気がおかしくなってしまうだろう。誰の運命も見たくない、関わりたくないと、人との接触を一切絶った孤独な生き方を選ぶかもしれない。
そうなってたかもしれない中で出会えた、運命の人。
例え我が身の命に代えてでも、君の命を…。
それがこの能力を授かった、僕の運命…。
ミステリアスな題材を、純度の高い純度ストーリーに、悲しく切なくもささやかな幸せを見出だし、思ってたよりかは悪くなかった。
が、不満点や解せない点も多々。
慎一郎の周りの人々、また行く先々で、透けて見える。
そんなに死ぬ運命にある人が多いのか…? 批判受けそうな言い方だが、死の運命が見える慎一郎自身が死を呼び込んでいるのでは?…と、勘ぐってしまう。
葵の死を回避しようと、ラスト、ある暴挙に出る慎一郎。この愛は盲目感、何かよくあるパターン。
冒頭の飛行機事故の女の子は実は…。そして、葵も実は…。展開が読めてしまった。
それはいいとして、自分の命を引き換えにしてまで運命を変えようとした慎一郎に比べ、終始受け身の葵は一体何してんのかなぁ、と…。
再会出来た事、結ばれない事を美辞麗句で“運命”と言われても…。
キャストについては、
神木クンと有村架純はそれぞれ好演。
でもちと、悩みまくりウジウジ主人公に苛々。まあ、神木クンに合ってる役柄だが。
志尊淳と北村有起哉の役柄が勿体無い。
DAIGOの役柄が意外と合っていた。(彼に天罰が下るなら実生活で…と思った男性諸君は少なくない筈)
思ってたより悪くはなかった。
でも本作も結局、悲恋を美化して涙を搾り取ろうとするありがちな邦画の運命…であった。