「☆☆☆★★ ああだ!こうだ!と色々。 勿論映画化は知っていた。それ...」フォルトゥナの瞳 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)
☆☆☆★★ ああだ!こうだ!と色々。 勿論映画化は知っていた。それ...
☆☆☆★★
ああだ!こうだ!と色々。
勿論映画化は知っていた。それでも原作を読む気には今ひとつなれなかった。
それはひとえに、原作者である百田尚樹の発言する言葉で有ったり。考え方等に、どうしても共感が出来ない面が多かった。これまでに映画化された何本かの作品も、やはりどうしても読む気にはなれなかった。
だから今回も原作を読まずに映画化された作品を観ようと思っていたのだが…。
なにぶんにも、通勤時の手持ちぶたさ感が勝ってしまい、思い切って読んでみた。
…って事で原作読了済み。
率直に原作を読んだ素直な感想としては…。
滅茶苦茶面白かった。何だよこれ本当に百田尚樹本人が書いたのか?一気に読んじゃったじゃないの!最近読んだ中では抜群に面白かった…ってのが正直な意見。
先ずは原作を読んだ上での感想。
原作では、主人公の童貞感が半端ない(実は童貞ではない)んだけど。まあ!それはどうでもいいところ。
この主人公である慎一郎が、《自分の幸せ》を選択するか。(自分の周辺世界の)《社会の平和》を選択するかで揺れ動く心もようが、読んでいて共感出来るところが面白い。
但し、多少の問題点も有って。例えば、最後に起こる(だろう)大災害の引き金になる元同僚の金田。
ここは、原作通りだと《バタフライエフェクト》による影響…で有るのを、原作の中盤に登場する医師の黒川によって説明がなされてはいるのだが。それを理解しつつも、ちょっとだけ都合が良すぎる感じがしないでもない。
ましてや、原作を読まずに映画を観た人に。この《バタフライエフェクト》を、はっきりと伝えるのは少し難しいのでは…と。
更に言えば。その黒川の話が、原作では途中で無くなってしまうところ。
読者には、黒川がどの様な立場に立っていたのか?は、なんとなく理解出来る様に描写されてはいたが。映画化された際には、これにも多少の説明が必要になって来る筈だし。何よりも恋人の葵が、(結果的に)慎一郎との関係どころか、周りの状況にさえ目を背けてしまった…と分かる真相は、かなり複雑な心境に陥る。
原作では、葵は慎一郎との愛の型を選ぶ…かに見せ。最終的には新たに近い将来に訪れるであろう愛の型を選んだのだろう。文章で語る原作だと「あゝそうだったのか〜!」となるのだが。これが映像化されスクリーンで展開される映画となった場合には。おそらく多くの観客が、葵の取る行動に嫌悪感を感じてしまわないか?ちょっと心配になってしまう。
何故その【力】が備わってしまったのか?を含めて、一見して純粋な愛の型を見せながら。底辺に潜む、恐ろしい女の抜け目の無さの話は。デートムービーとして観に来たカップルの心をゾワゾワとさせるのが眼に浮かぶ。
真理子の転落人生なんかを知ってしまっては尚更に…。
以下、映画を観ての感想。
これはもう、原作を読んでいる人と。映画化だけを観た人での温度差に大きな違いが出るのは間違いないですね。とにかくここまで変更しますか〜。
細かな変更は数多いのですが。最終的に180度真逆な話になっているのには。別の意味で驚きました( ゚д゚)
原作を読んでいる人の方が、最後の展開に驚いてしまうかもしれない。逆の意味で!
映画が始まるのは、原作の中盤にあたる葵との出会い頃から。
慎一郎が何故【その能力】を身に付けたのか?は、原作とは違い。飛行機事故で生死の境を経験し、異常な能力を備わった事になっていた。
これは過去にも、『フィアレス』や『アンブレイカブル』等でも描かれていた事から。何となく理解は出来るかな?…と言ったところですが。原作同様に、何故この時期に?の説明は無い。
とりあえず納得して欲しい…と言ったところでしょうか?
原作前半から慎一郎の周辺で起こる幾つかの出来事。
バイク事故の男。(葵との出会い後に自動車事故へ変更)
タクシー運転手。
公園の子供。
ビアガーデンの女。
ベンツ車のオーナー夫婦。(宇津井へ変更)
駅のホーム(黒川との出会い)
天才パティシエ。
遠藤と金田の揉め事(葵との出会い後に変更)等。
幾つかのエピソードは、尺の関係からかカットされていたり。葵との出会い後に、型を変えて変更されている。
例えば、ベンツのオーナー夫婦の事故死は。宇津井と金田の舎弟の松山を併せた話へ…と。
その中でも、事務員の美津子との話で出て来る《死神》の話。それに、黒川が慎一郎に語る《バタフライエフェクト》の話は、原作を読んでいて1番面白く感じる部分なのですが。これをカットしてしまっている為、揉め事から《死ぬ運命》に有った遠藤を助けた事で。いずれ引き起こされてしまう列車事故へと至る《バタフライエフェクト》が、普通に起こる事故へと変化してしまってしまい。人の運命に関わる事は【神の領域】へ踏み込む事になる…と言う。原作に於ける黒川の忠告が、ないがしろにされてしまい。ちょっと残念なところ。
ただ、少し考えたのならば。それもこれも、三木孝浩監督がこの題材のメガホンを取った…って事で、全てを納得するしか無いんでしょうね。
今では、恋愛映画の旗手…と言えば、真っ先に名前の挙がる監督さんですから。
若者の純粋な恋愛話でも有り。ハナっからデートムービーとして企画されており、この原作から恋愛映画を製作するのならば。こう撮るのは至極当然と言えるのでしょう。
多分、私も。原作を読んでいなかったのならば。この純粋な恋愛映画を「流石三木監督!」と思ったと思います。
だが…。
この原作の凄いのは!悔しいけれど。(百田尚樹本人に「悔しいって何だよ!」…と言われそうだが)純粋な男の恋愛話と思わせながら、最後の数ページで一気にホラー話へと変化するところ。
つまり…。
【純粋な男の恋愛を。自分の身の安全の為ならば、平気で踏み台にする恐ろしい女の話】
なのだから。
ラストを普通の恋愛話にした事で、デートムービーとして成立したものの。原作通りに撮った場合に起こるであろう、素直に泣こうと思って観に行ったら。最後に気まずい想いを味わう数多くのカップルの姿…それはちょっとだけ見たかったかもなあ〜…と(-_-)
2019年2月17日 イオンシネマ板橋/スクリーン2