「傷つき病んでしまった傷痍兵の悲しみに寄り添うファンタジー映画美術の独創性」天国でまた会おう Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)
傷つき病んでしまった傷痍兵の悲しみに寄り添うファンタジー映画美術の独創性
第一次世界大戦終結間際から約2年間を時代背景とし、独特なデザイン、映画美術で魅せる詐欺犯罪の復讐劇。限られた登場人物が複雑に、または運命的に絡み物語を構成するファンタジー映画の長短がハッキリした特徴を持つ。動機や過程の説明不足は、原作ありきの理由なのか判断出来ないが、どちらにしても分かりづらいのがもどかしい。それでも、脚本・監督・主演を兼ねるアルベール・デュポンテルの特に演出は、軽妙洒脱にして時に技巧の鋭敏さを持つもので感心するところが多い。また、父との確執を抱えたままで選んだ戦争で犠牲となり自暴自棄となる画家エドゥアール・ペリクールが描く絵が、同時代のエゴン・シーレに似た個性的で自滅的な画風なのが合っているし、彼が創作する多彩なデザインと色彩と形の独創性豊かな仮面の美しさやコミカルさは素晴らしい。20世紀初頭の時代再現の撮影もいい。
近代兵器によって人類史上最大級の犠牲者と傷痍軍人を出した第一次世界大戦の、今まであまり扱われなかった題材の関心度は高く、最後まで興味深く見学することは出来た。小説の映画化としては及第点だろうが、映画としての完成度では不満が残る。ただ、アルベールのように静かにじっくりと、傷つき病んでしまったエドゥアールのこころを探ることが、この作品の本質であり、彼の悲しみを少しでも理解できればそれでいいのではないだろうか。
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