「筋ジス患者のあるあるを含む」こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話 うにたん♪さんの映画レビュー(感想・評価)
筋ジス患者のあるあるを含む
知らない人は知らないままの患者像とボランティアの姿を柔か目に描いている。ボランティアの姿はリアルさを薄めている。ピンからキリまでのボランティアがくるのだから、鹿野と揉めた人も一杯いるだろうし、そこまで掘り下げて行くと観る側もしんどくなる。
作品内容もリアルに描くには厳しい病気であり、若い患者でも「明日の朝は呼吸してないかも?」と自分の死を身近に感じ不安で眠れなくなることも多い。療養所などでは毎日話していた隣の部屋の友達が急に居なくなるなど、子どもの頃から突然死を実感させられ続けているのだ。
極端な患者だと「出産前検査で異常が解ったら殺して欲しかった」とまで言っている人もいる。
その前提で見れば、多少オーバーに見える鹿野の態度は筋ジス患者としては普通である。
筋力の低下により呼吸出来なくなるのは恐ろしい事であり、本人は絶えずその事を意識しているのだから。
独りでは何も出来ない鹿野にとって、命をかけてもやりたい事をやるのが存在意義になっている。
人口呼吸器装着すれば独力で生きられない事を否が応でも認識させられ、行動に制限がかかり、死への(存在意義の喪失)へと直結して本人としては苦渋の決断だったのだろう。
しかし、あの要求には実際医療従事者としたら堪らないだろう…あんなんしてたら迷惑だし、安静も保つ気がないとか…強制退院だわ(笑)
だからボランティア頑張りには頭が下がる。
500人もの理解者を得られたのは単純に鹿野さんの魅力だけではないが、その関わりによって鹿野さん本人のみならず、熱心なボランティアたちも人間的な成長を遂げたのではないだろうか?
ただプロポーズの件はあそこまでやる必要があるのか?とは思う。失敗したら意欲がなくなりそうで傍目から見ても恐かった。勝算は低いけど当たって砕けても悔いはなかったんだろうなぁ。
鹿野靖明さんの生活プライベートの全てをボランティアや介護者に見られてしまう人生を理解することは出来ないが、自分ならどうしただろうと考えると凄い話である。
他人に助けを求めるって意外と難しいってわかる。