LETO レト

劇場公開日:2020年7月24日

LETO レト

解説・あらすじ

ロシアに実在した伝説のバンド「キノ」のボーカルと、その才能を見いだした妻をモデルに、自由と音楽を追い求めた若者たちの姿を描き、第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された青春映画。1980年代前半、西側諸国の文化が禁じられたソ連時代のレニングラード。アンダーグラウンドではレッド・ツェッペリンや T・レックスといった西側のロックスターたちの影響を受けたロックの息吹が芽生えようとしていた。そのシーンで人気を博していたバンド「ズーパーク」のリーダー・マイクのもとにロックスターを夢見るヴィクトルが訪ねてくる。ヴィクトルの才能を見いだしたマイクはともに音楽活動をスタートさせるが、マイクの妻ナターシャとヴィクトルの間に淡い恋心が芽生え始めていた。無実の容疑で拘束されロシア政府の監視下にあるキリル・セレブレンニコフ監督が、1年半の自宅軟禁の中で完成させた。カンヌ・サウンドトラック賞最優秀作曲家賞を受賞。

2018年製作/129分/G/ロシア・フランス合作
原題または英題:Leto
配給:キノフィルムズ
劇場公開日:2020年7月24日

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映画レビュー

4.0 閉塞感漂う灰色の時代に、自由を歌うロックが精彩をもたらす

2020年7月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

楽しい

ロシア映画といえば、重厚な人間ドラマ、戦争物、文学や芸術の香り高き作品が日本でも公開されてきたが、80年代ソ連を舞台にした青春音楽映画は相当レアだ。当時欧米のロックに影響を受けた音楽シーンがソ連で盛り上がっていた事実も、他の国ではマニア以外ほとんど知らなかっただろう。

人気バンド・ズーパークのボーカルでプロデュース能力もあるマイク、妻のナターシャ、マイクに才能を見出されるヴィクトル(のちに「キノ」のボーカルとして成功)という、実在の人物3人が話の中心。社会主義体制下で表現活動や聴衆の挙動まで統制される灰色の時代に、彼らが追い求める自由の象徴としてロックが鳴り響く。

劇中で流れるズーパークやキノの曲を知らなくても大丈夫。70~80年代洋楽のオリジナル音源やカヴァー演奏(T・レックス、ルー・リード、トーキング・ヘッズ等々)が意匠と遊び心に満ちた映像と共に流れ、音楽好きならきっと楽しめる。

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高森郁哉

4.0 文化統制下にスパークする西側音楽への思い、認め合う才能、躍動する演奏シーンに胸を射抜かれてやまない

2020年7月30日
PCから投稿

80年代、レニングラード。そこには西側音楽に影響を受けた者たちのアンダーグラウンド・ロックシーンが存在した。物語はそこで出会うマイクとヴィクトルを軸に展開するが、わずかなやりとりで互いの才能を認め合う姿や、彼らが奏でる音色の豊かさもさることながら、仲間がこぞって海辺でギターを鳴らし歌を口ずさむ光景も青春の1ページのようで胸に沁みる。そしてモノクロームに色彩や落書きがほとばしる時、それは映像が現実から空想へと切り替わる合図だ。街中で高鳴るミュージカル調のトーキング・ヘッズ、イギー・ポップ、ルー・リード・・・。裏を返せば、これぞ鉄のカーテンを物ともせず、主人公の心情が西側の楽曲と極めてリアルにシンクロを果たす瞬間とも言えよう。もうとにかく、我々が預かり知らなかった文化や日常、そして人々の生き様が繊細に息づく本作。その音楽への飽くことなき愛と情熱、本能的な叫びに、終始心を射抜かれてやまなかった。

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牛津厚信

3.5 ロシアのロックミュージックシーンを美しいモノクロ映像で綴った良作

2025年9月14日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

冒頭のビーチでの遊興の描写がとても良い。
モノクロ画面だからこその繊細な質感。広角画面に映る砂浜や木立の広がり、優しげなそよ風。
レニングラードの短い夏の雰囲気が詩的に表現されている。そして新人ミュージシャン2人のデモ演奏、夜は焚き火を囲んで若者たちの乱痴気騒ぎ。
本作の題名LETO(ロシア語の夏)をビジュアル化した見事なシーンである。
音楽がテーマの映画であるが、このシーンを観るだけでも私には価値があった。

洋楽に関しては疎いので、西側の原曲もわかっていないのだが、ロシアのミュージシャンたちのオリジナル曲も悪くなく、西側への強い憧れもひしひしと伝わってきた。MV風の演出やアニメーショングラフィックも面白い。

ただ新人ミュージシャン ヴィクトルと人気ボーカル マイクの妻のナターシャとの恋愛については、敢えて入れなくてもいいように感じた。二人にそれ程の本気度はなく、スターボーカルのマイクの悲哀だけが強調された印象。まあ実話に基づく脚本の一要素として入れたのかも知れないが。

ヴィクトル役のユ・テオは「パスト ライブス」の彼だったとは、データを見るまで気付かなかった。

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sugar bread

3.5 ヘッドバンキングしただけで警備員に注意されるコンサート

2020年9月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 『ブラッドショット』に続いてまたもやトーキングヘッズの「サイコキラー」!「セックスピストルズみたいな西側の音楽を聴くな」という台詞に対して「彼らは労働者階級。敵じゃない」と反論する若者たち。ソ連時代の窮屈な音楽環境の中でも、レコードを聴くくらいは許されてたみたいだけど、反体制の内容だと処罰される。しかし、確実に西側音楽は浸透していた。

 聴いている音楽はビートルズ、ストーンズ、ボウイ、T-REXその他もろもろだったのに、ヴィクトルにしてもマイクにしても演奏している音楽は日本の70年代フォークを彷彿させるアコースティックな世界。ただし、ラブソングなんて甘っちょろい歌詞はない。若いながらも人生のわびさびを切々と歌っている雰囲気があった。

 ほとんどが70年代ロックのカバー曲と彼らの音楽で構成されているのですが、雰囲気はすっごく伝わってくる。マイクがリーダーをつとめる人気バンド「ズーパーク」もかなり影響を受けているものの、ロック未発達のソ連ではやはり音響は大人しく、コンサートでは立つことも許されない。まるでクラシック音楽コンサートのように・・・

 気になったのが、バンド活動をしていても生活基盤の職業をちゃんと持っていること。言ってみれば、社会人バンド、学生バンドみたいなものだ。レコーディングスタジオだけは本職のスタッフがいるようだったけど、音はやっぱりプロを感じさせなかった。逆に、アマチュアだからこそメッセージを伝えるたり、訴えるものがあるというもの。商業主義に走らない音楽はむしろ新鮮なのです。

 自分がバンドやってた頃と同じ時期だし、音楽的にはかなり共感。高校時代にエレキ禁止という不条理な校則があったため、フォークギターだけでロックを演奏するなんてところには懐かしささえ感じてしまいました。映像でもモノクローム実写にペインティングを施したポップなもので、フィクションだよ~と、ふざけているような映像も加わえてあった。

 ラストの演奏、エンドロールの音楽は「キノ」自身のもので、さすがに素人感はない。そして、1962-1990という字幕がヴィクトルの夭逝を示しているんだと知り、悲しくなってしまった。やはり、多くのロックスターは27歳で死ぬ(ヴィクトルは28歳)という伝説は本当だったんだなぁ。

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kossy