劇場公開日 2020年7月24日

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LETO レトのレビュー・感想・評価

全13件を表示

4.0閉塞感漂う灰色の時代に、自由を歌うロックが精彩をもたらす

2020年7月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

楽しい

ロシア映画といえば、重厚な人間ドラマ、戦争物、文学や芸術の香り高き作品が日本でも公開されてきたが、80年代ソ連を舞台にした青春音楽映画は相当レアだ。当時欧米のロックに影響を受けた音楽シーンがソ連で盛り上がっていた事実も、他の国ではマニア以外ほとんど知らなかっただろう。

人気バンド・ズーパークのボーカルでプロデュース能力もあるマイク、妻のナターシャ、マイクに才能を見出されるヴィクトル(のちに「キノ」のボーカルとして成功)という、実在の人物3人が話の中心。社会主義体制下で表現活動や聴衆の挙動まで統制される灰色の時代に、彼らが追い求める自由の象徴としてロックが鳴り響く。

劇中で流れるズーパークやキノの曲を知らなくても大丈夫。70~80年代洋楽のオリジナル音源やカヴァー演奏(T・レックス、ルー・リード、トーキング・ヘッズ等々)が意匠と遊び心に満ちた映像と共に流れ、音楽好きならきっと楽しめる。

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高森 郁哉

4.0文化統制下にスパークする西側音楽への思い、認め合う才能、躍動する演奏シーンに胸を射抜かれてやまない

2020年7月30日
PCから投稿

80年代、レニングラード。そこには西側音楽に影響を受けた者たちのアンダーグラウンド・ロックシーンが存在した。物語はそこで出会うマイクとヴィクトルを軸に展開するが、わずかなやりとりで互いの才能を認め合う姿や、彼らが奏でる音色の豊かさもさることながら、仲間がこぞって海辺でギターを鳴らし歌を口ずさむ光景も青春の1ページのようで胸に沁みる。そしてモノクロームに色彩や落書きがほとばしる時、それは映像が現実から空想へと切り替わる合図だ。街中で高鳴るミュージカル調のトーキング・ヘッズ、イギー・ポップ、ルー・リード・・・。裏を返せば、これぞ鉄のカーテンを物ともせず、主人公の心情が西側の楽曲と極めてリアルにシンクロを果たす瞬間とも言えよう。もうとにかく、我々が預かり知らなかった文化や日常、そして人々の生き様が繊細に息づく本作。その音楽への飽くことなき愛と情熱、本能的な叫びに、終始心を射抜かれてやまなかった。

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牛津厚信

3.5ヘッドバンキングしただけで警備員に注意されるコンサート

2020年9月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 『ブラッドショット』に続いてまたもやトーキングヘッズの「サイコキラー」!「セックスピストルズみたいな西側の音楽を聴くな」という台詞に対して「彼らは労働者階級。敵じゃない」と反論する若者たち。ソ連時代の窮屈な音楽環境の中でも、レコードを聴くくらいは許されてたみたいだけど、反体制の内容だと処罰される。しかし、確実に西側音楽は浸透していた。

 聴いている音楽はビートルズ、ストーンズ、ボウイ、T-REXその他もろもろだったのに、ヴィクトルにしてもマイクにしても演奏している音楽は日本の70年代フォークを彷彿させるアコースティックな世界。ただし、ラブソングなんて甘っちょろい歌詞はない。若いながらも人生のわびさびを切々と歌っている雰囲気があった。

 ほとんどが70年代ロックのカバー曲と彼らの音楽で構成されているのですが、雰囲気はすっごく伝わってくる。マイクがリーダーをつとめる人気バンド「ズーパーク」もかなり影響を受けているものの、ロック未発達のソ連ではやはり音響は大人しく、コンサートでは立つことも許されない。まるでクラシック音楽コンサートのように・・・

 気になったのが、バンド活動をしていても生活基盤の職業をちゃんと持っていること。言ってみれば、社会人バンド、学生バンドみたいなものだ。レコーディングスタジオだけは本職のスタッフがいるようだったけど、音はやっぱりプロを感じさせなかった。逆に、アマチュアだからこそメッセージを伝えるたり、訴えるものがあるというもの。商業主義に走らない音楽はむしろ新鮮なのです。

 自分がバンドやってた頃と同じ時期だし、音楽的にはかなり共感。高校時代にエレキ禁止という不条理な校則があったため、フォークギターだけでロックを演奏するなんてところには懐かしささえ感じてしまいました。映像でもモノクローム実写にペインティングを施したポップなもので、フィクションだよ~と、ふざけているような映像も加わえてあった。

 ラストの演奏、エンドロールの音楽は「キノ」自身のもので、さすがに素人感はない。そして、1962-1990という字幕がヴィクトルの夭逝を示しているんだと知り、悲しくなってしまった。やはり、多くのロックスターは27歳で死ぬ(ヴィクトルは28歳)という伝説は本当だったんだなぁ。

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kossy

4.0【1980年代前半、ソ連のレニングラードでロシアン・ロックンロールが誕生した背景を、西側ロックの名曲を効果的に散りばめ、”一夏の風景”に凝縮して描き出した作品。ロック好きには堪らない作品でもある。】

2020年9月13日
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鑑賞方法:映画館

興奮

知的

幸せ

 ー当時、人気を博していたバンド「ズーパーク」のリーダーであるマイクとその後、ロシアンロックを担うことになるヴィクトル(ユ・テオ:最初、”スマッシング・パンプキンズ”のジェームス・イハかと思った・・。)との出会い。

 彼の才能を見出したマイク。だがマイクの妻ナターシャ(イリーナ・ストラシェンバウム!!)とヴィクトルの間には恋心が・・。ー

■インパクトある、西側ロックを効果的に使った素晴らしきシーンの数々
 1.列車の中で、マイクたちに絡んできた社会主義思想に染まった老人・・
 「サイコ・キラー」”byトーキング・ヘッズ”が大音量で流れる中、繰り広げられる血みどろロック・オペラ。
 そして、狂言回しのメガネのインテリ風の若者が呟く・・。”フィクションだ・・”

 2.トロリーバスの中で「パッセンジャー」”Byイギー・ポップ”が大音量で流れる中、バスの乗客たちが歌い、踊るシーン。・・そして、”フィクションだ・・”

 3.妻ナターシャとヴィクトルの仲を案じるマイクが土砂降りの雨の中、寄り掛かった公衆電話ボックスの中で酔いのまわった女性が高らかに歌う、皮肉たっぷりの「パーフェクト・デイ」”Byルー・リード”

■少しの驚き
 ・当時のソ連での、ロック会場のシーン。観客はのっているが、パイプ椅子にキチンと座り、周囲には明らかにKGB関係と思われる男たちが険しい顔つきで立っている・・。
 ペレストロイカが目前に迫っていた時期とは言え、どのような形式にしても、ソ連でロックコンサートが許容されていた事に、正直驚いた。

■かなりの驚き
 ・ヴィクトルのアコギの歌声の素晴らしさ。更に彼が立ち上げたバンド「キノ」の曲のフォーク・ロック調の風合いの良さ。
 特に、ラストでヴィクトルが披露した「Derevo(The Tree)」とエンドロールで流れた「Konchitsya ”Leto”(Summer will End」は、沁みた・・。

<資料によると、この素晴らしき作品の監督は”反体制的な芸術活動”により、一時拘束され、今もロシア政府の監視下にあるとの事である。
 そう考えると、ロシアの不自由さが今作品で描かれた当時と比しても明らかに悪化しているのだろうか・・>

<2020年9月13日 刈谷日劇にて鑑賞>

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NOBU

2.5伝記的ロック・ミュージカル

2020年8月6日
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鑑賞方法:映画館

単純

興奮

Talking Headsの「Psycho Killer」とイギー・ポップの「The Passenger」からルー・リードの「Perfect Day」にMott the Hoopleの「すべての若き野郎ども」と、楽しいPvのような映像にミュージカル風味が斬新な感覚にも。

マイクのバンドはガレージロック・リバイバル的な?ヴィクトルはロックンロールよりもニュー・ウェイブながらフォークよりな音楽性。

ソ連の国家情勢にマイクの立ち位置などピンと来ない感じで、ナターシャの小悪魔的要素にイラっ!と、物語自体が進んで行かないようで葛藤や起伏に物足りなさが。

ロックンロール的青春群像を勝手に期待したせいか、基本的に奇妙でイライラする三角関係を中心とした男女の甘っちょろい物語に落ち着いている。

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万年 東一

3.5ソ連のロックを楽しむ

2020年7月28日
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鑑賞方法:映画館

1980年代にソ連で活躍したKINOを中心としたロックバンドたちの物語。
少しベテランのアーティスト・マイクとその妻ナターシャの話かと思っていたが、あらすじ見るとヴィクトルとナターシャの恋の話なんだね。観た後でわかるくらいだからその描き方は中途半端なのかも。むしろ印象に残るのは、途中のPVのような映像。なじみのある曲をカバーしてることもあって楽しかったし、結構カッコよかった。
あと印象に残ったのは当時のソ連の体制。ロックのライブで立ち上がったり、手を振ったりってのができないことに驚いた。当時のソ連ではもちろんあからさまな体制批判なんてできないから別の形でロックとしての立場を守ろうとしたのだろう。その試行錯誤が垣間見えて興味深い。
KINOはロックというよりフォークに近く、あまり好みの音楽ではなかったが、マイク率いるズーパークはかっこよかった。マイクはJET(オーストラリアのバンド)のヴォーカル・ニックに似てることも印象に残った(知らない人はごめんなさい)。
涙するわけでも共感するわけでもなかったけど、結果楽しむことはできた良作ロック映画だ。

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kenshuchu

4.0ロックの名曲カバーで魅せられた!ミュージカルシーンの勢いとパワーが...

2020年7月28日
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鑑賞方法:映画館

ロックの名曲カバーで魅せられた!ミュージカルシーンの勢いとパワーがカッコいい。
サイコキラーなんかパンクらしく叫び歌い、車内の老若男女巻き込んでノリノリで最高だった。

まだソビエトだったころのロックに夢中になった若者達の話だから、KGBが仕切るライブハウスとか、テレビから流れる国歌(祖国は我らのために)が時代を感じさせる。
とはいえ、彼らは酔っ払い夏(レト)を満喫し、突き抜けた音楽をかき鳴らし開放的だ。

一方で主人公ヴィクトルのバンド(キノ)が素朴で詩的な音を奏でるのは水と油の様で、まるで微かに触れ合う三角関係を表す様だった。

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パプリカ

2.0呆気ない感じがするのは、マイクは物分かりが良すぎ、ヴィクトルは聞き...

2020年7月28日
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鑑賞方法:映画館

呆気ない感じがするのは、マイクは物分かりが良すぎ、ヴィクトルは聞き分けが良いから。当時のソ連ではそれが精一杯だったのかもしれないけど。

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Mr. Planty

4.0音楽が良い!

2020年7月28日
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有名曲のカバーアレンジが秀逸。
アニメーションもまるでMTV!

あと、あの頃のソ連の生活感が見えた(ような気がする)。

ソ連崩壊間近では西側の曲も全然オッケーだったのにも驚き。
あとジーパンもOKみたいだったし。

共産圏はなんとなく貧しいよね…
子供の頃を思い出す…

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みけ

4.0自由な表現が異世界へと誘う

2020年7月27日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

odessa上映なる音圧重視の特別なスピーカーを用いたもので観賞。
基本的に音で楽しむような作品だったと感じたので、良い音響で体感できたことは幸いだった。
自由で斬新な表現だったため、これまで見てきた旧共産圏の映像作品とは異なり、閉塞感みたいなものはみじんも感じず、抑圧するものが逆にフリーダムへの活力となっているかのような表現が個人的には気に入っている。
音楽自体は、普通のロックへのリスペクトで仕上がっているので、それほど真新しさは感じなかったけれど、馴染みのある曲調に結構引き込まれる。
カバーや懐かしい音楽がたくさん流れるので、何かしらお気に入りの場面を見いだすことができるのでは?個人的には、サイコキラーが最高だった。
過去の歴史を扱っているという意図でのモノクロだと(勝手に想像して)思うのだが、それを利用したカラー映像の対比なども魅力的。
実際にあった出来事や時代背景を描いているのに、不思議と別世界のファンタジーにも思えてしまった。
非常に魅力的な映画だったと思う。

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SH

4.0東側の国にもロックへの熱い衝動が在った

2020年7月26日
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鑑賞方法:映画館

1980年代前半、文化統制下のソ連/レニングラードに実在した二人のミュージシャンの音楽との葛藤、そして恋を描いた。アメリカやイギリスのロックに心酔しつつ、自分たちの音楽を模索する若者達がいた。

ビートルズ、ストーンズ、フー、ツェッペリン、ドアーズ、ピストルズなど、彼らが聴いていた音楽は我々とまったく同じだった。

特にヴェルヴェット・アンダーグランド/ルー・リード、デヴィッド・ボウイ、T・レックス/マーク・ボラン、イギー・ポップ、トーキング・ヘッズたちへの思い入れの強さが、彼らの置かれた環境を思うとメチャ府に落ちた。

今作にはこれまで知ることができなかったことが沢山あった。東側の国にもロックへの強い衝動が存在した。ロックは世界の共通言語だった。

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エロくそチキン

5.0最高やん!!

2020年7月26日
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鑑賞方法:映画館

なんだ?!このオシャレな音楽映画は!

ミュージックビデオのようで、
ドキュメンタリーのようで、
ミュージカルのようで、
ヒストリカルムービーようで、
フィクションとノンフィクションの狭間のような不思議な感じで、
モノクロとカラーのコラージュが秀逸で、
音楽かっこいいし、
最高やん!!

旧ソ連の歴史やアーティストには詳しくないけれど、
若者たちの音楽への想いは、いつの時代も熱くて胸がキュンとする。

発展途上の音楽や若者は、とても魅力的でオモシロイ。

要所要所で挿入される「フィクションです」のワンシーン、
スタンディングにモッシュありの盛り上がるライブシーンに、
コロナ禍でライブにいけない自身の現状が合わさって泣けてきた…。

早くライブに行きたい…。

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hkr21

3.0イデオロギーとともにRockも死んだ

2020年7月25日
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原体験ではないので、個人的な見解にすぎないが、ロックは社会に息苦しさを感じる若者の代弁と体制に抗うプロテストソングであったと思う。

それは西の文化とは遮断されていたが、東側にも伝染し、東側の盟主であるソビエト連邦でも若者の気持ちをとらえていく。

当時に比べて今は洋の東西を問わず、体制側の行動はより巧妙になり、直接間接問わず反体制的な動きをコントロールしている。お金も時間を選択肢も格段に増えていることもあり、若い世代には政治に関する関心も期待もない。

大音響でスリーコードをかき鳴らす音楽は倦厭され、chill outのような耳障りの良い音楽が好まれる。

Lenny Kravitzは95年の曲で「rock 'n' roll is dead」と叫んだが、90年に冷戦が終結し、イデオロギー闘争とともにロックも死んだのかもしれない。

本作では冷戦最後のデケイドの下、革命の地のレニングラードで若者たちがシャウトした姿を歴史の1ページとしてモノクロで描いている。ときおり、MVのようにイラストやカラーが入りオシャレでポップな場面が展開されるのも印象的だ。

個人的には、作品中の音楽のクオリティが映画の全体的なレベルを下げてしまっているように思ってしまった。彼らが敬愛するT.RexやLou Reedに及ぶべくものではなく、そもそも70年代で一時代前のアーティストばかり。Kinoの楽曲は60年代のフォークソングのようだ。

しかし、これは彼らのレベルが低いわけではなく、むしろ冷戦下の情報統制が厳しい時代で、よくこれだけ西欧のロック文化を彼らなりに昇華させたものだと驚くばかり。

ひとことでいうと、カッコいいロシア発のロックミュージカル映画。

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atsushi