「大人の恋愛映画」COLD WAR あの歌、2つの心 しずるさんの映画レビュー(感想・評価)
大人の恋愛映画
もっと社会問題色の強い映画かと思っていたら、純然たる恋愛映画だった。
祖国ポーランドで出会い、恋に落ちた歌手のズーラとピアニストのヴィクトル。ヴィクトルはパリに亡命し、思い切れなかったズーラはポーランドに残る。
冷戦下の各国で、再開する度に愛を甦らせながらも、思うままに生き思うままに歌いたいズーラと、資本主義社会の中に居場所を得たいヴィクトルは、すれ違い、別れを繰り返す。
求められるまま、各国に受け入れられる形へ変えられ切り売りされるズーラの音楽が、東西の狭間で揺れ動き、分断されるポーランドの辛苦に重なるようで切ない。
プツリと途切れ、時間経過を全く省いて、いきなり数年後から再開される構造が独特で、最初のうち少し混乱した。
モノクロの映像と、それを彩る様々な音楽がひたすら美しく、目と耳には大変贅沢だった。
ただ、恋愛体質が薄いせいか、物語の主軸となる二人の愛の心情に、殆ど感情移入できず。
離れている間の互いの人生や心情も、大方察せられるものの、多分意図的に描くことをせずにいるので、すれ違いのもどかしさが募るばかりで、スッキリできない。
結末も、あー、その決着を選んじゃうのか…と、些か微妙な気持ちに…。
文学上の恋愛なんて、そんなものなのかも知れないですけど。
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