「運命じゃない二人」COLD WAR あの歌、2つの心 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
運命じゃない二人
運命じゃない人って時々いる。運命だって思ったのにそうじゃなくて、運命ならいいのにって願うのにうまくいかなくて、運命ならきっとまためぐり逢うはずって信じて別れたまま、永遠に報われないような。そのくせ、運命じゃないのにずっと心から離れていかない人。
この映画にそんな「運命じゃない二人」の恋路を見た。時代と冷戦と国境と政治と音楽に翻弄され、引き裂かれたまま戻ることも進むこともできなくなってしまった二人が、運命に逆らってなんとか二人の愛を結び付けようとするのにどうしても結ばれない。その様子が切ないやら美しいやらで、文字通り胸が締め付けられるようだった。時代や国が違えば二人はもしかしたら「運命の二人」だったのだろうか?と考えるけれど、私はなんとなくそうじゃない気がする。傍にいることもいないことも、どっちも二人にとって苦しいことに見えた。
正直なところ、はじめのうちは映画の時代背景や国の情勢など、私の知識不足のせいで理解が難しいのでは?なんて不安に感じていたのに、映像の中にいる主人公二人をただ見つめているだけでもう話が分かる分かる分かる・・・。二人を通してその時代がより鮮明に見えるようでもあった。
余計な説明はすべて排除して、そこにいる二人の姿や在り方だけでシーンを魅せ切る潔さ。そしてそれを切り取る映像のリアリティと美しさ。加えてそれらを彩る音楽。2018年の映画なのに既に「名画」の風格すら感じてしまった。
今生ではもう結ばれないと悟った二人が、運命に逆らって下した最後の決心と、残された時間の余韻。
切なくて美しい極上のラブストーリーだった。そうだ、こういう映画を「ラブストーリー」と呼ぶのだ。