「古びて色褪せた『ラ・ラ・ランド』」COLD WAR あの歌、2つの心 よねさんの映画レビュー(感想・評価)
古びて色褪せた『ラ・ラ・ランド』
大戦後のポーランド。歌手志望のズーラは音楽学校のオーディションに参加、講師でピアニストのヴィクトルにその才能を気に入られて入学、やがて2人は愛し合うようになる。数年後公演先のベルリンでフランスに亡命しようと持ちかけたヴィクトルの提案にズーラは戸惑いながらも承諾する。一足先に待ち合わせ場所に向かったヴィクトルだったが待てど暮らせどズーラは現れず独りベルリンを去る。さらに数年後ジャズバーでピアノを弾くヴィクトルの前にズーラが現れる。なぜあの時待ち合わせ場所に来なかったのかとヴィクトルは詰め寄るが・・・。
全編モノクロかつ画面アスペクト比4:3とクラシカルな50's仕様。美しい歌と踊りを背景に冷戦下の政治情勢で終始憂いを纏った歌姫ゾーラと彼女に振り回されるヴィクトルの姿は、下卑た例えを承知で言うと色褪せた『ラ・ラ・ランド』。90分に満たない短い尺ながら、激しく燃え上がったかと思えば陰鬱な影を落としながら凍りつく感情の機微をエモーショナルに活写、聴いたこともない民謡からオールディーズまでバラエティに富んだサントラの選曲が映像に反して煌びやかでカラフル、いかにも欧州産な荘厳な風格を持った何処までももどかしい恋物語は鑑賞後の客席に豊かな余韻を残していました。
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