「対比の仕方が絶妙」ブラック・クランズマン よしさんの映画レビュー(感想・評価)
対比の仕方が絶妙
公民権運動により黒人の法的な権利が向上し始めた1950年代。アフリカ系とユダヤ人の警官が、KKKに潜入捜査を図る物語。
特異な設定ですが、実話を元とした作品のようですね。
設定からコミカルなものを想像しましたが、作風はシリアス。でも、比較的軽いタッチで描かれていて、観やすい映画に仕上がっています。
映画は、KKKへの潜入捜査をメインストーリーに、差別問題、差別に対する考え方を描いていきます。
対比の描き方が秀逸ですね。
既存の枠組みで差別に立ち向かう主人公と、既存の組織の打倒を唱える恋人。
アフリカ系の自尊心を持つ主人公と、ユダヤのアイデンティティを失っていた相棒。
黒人少年の惨殺について語らい復讐を叫ぶ黒人組織と、その端緒となった映画「国民の創生」を鑑賞して喜び叫ぶKKK。
クライマックスはカタルシスもあり、でも簡単にハッピーエンドな気持ちにもさせない・・・そんな余韻の残る秀逸なものでした。
少し残念だったのは、潜入捜査の恐怖や難しさの描き方が不十分だったこと。それが、「軽めのタッチで観やすい」と感じたのでしょうけど、映画としては少々勿体ないように感じました。映画の趣旨は、差別問題なのでしょうから、潜入捜査に重きを置かなかったことも分かるのですが、個人的には少し残念に思えたところ。
この映画は2018年の公開なんですね。エンドロール前でトランプの映像が出て得心しました。分断された社会の象徴であるトランプの出現。それに対する危機感をあらわにした映画だったのでしょう。
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