「地続き」ブラック・クランズマン しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
地続き
Amazonプライム・ビデオで鑑賞。
1970年代のコロラドスプリングズを舞台に、黒人刑事が白人至上主義団体“クー・クラックス・クラン(KKK)”に潜入捜査した実話を映画化したクライム・エンターテインメント。
キャッチコピーは物語に関する勘違いを招く文言なのでご注意を。黒人刑事ロン・ストールワースが潜入したわけではなくて、仲間の白人刑事フリップがロンに成りすまして潜入捜査を行いました。ロンは電話担当と監視・後方支援の役割。
潜入捜査過程がスリリング! ロン(フリップ)のことを嗅ぎ回る者の存在に、正体がバレやしないかとハラハラ…。並行して描かれる黒人差別撤廃を求める学生運動家パトリスとロンの交流が潜入捜査パートと絡み合い、事態は思わぬ方向へ…。
ロンは黒人、フリップはユダヤ人。共に差別されて来た歴史を持つ民族同士、硬い絆と友情に結ばれて…いかないのが本作のミソかな、と…。仕事の上ではパートナーとなり、お互いを認め合っていますが、それ以上の馴れ合いはしない。この関係性がなんとも言えない心地良さを感じさせてくれました。
やがて事件は、少々苦味を伴いながらも、溜飲が下がる結末を迎えました。しかし、物語はここで終わりませんでした。
十字架を焼く儀式を行う白装束の集団を映した不穏な場面が挿入されたかと思うと、一気に現代へタイムジャンプ。2017年の“ユナイト・ザ・ライト・ラリー”で起こった痛ましい事件の、とてもショッキングな映像が流れました。
ハッとさせられました。本作はエンターテインメントの皮を被った痛烈な皮肉なのだ、と…。事件は昔の“終わった”出来事ではなく、現在に地続きなものなのだ、と…。
白人と黒人の和解は、事件を通した限定的なものさえも、本作では全く描かれませんでした。ロンとフリップの関係性を見ても、先述の通り、必要以上の馴れ合いは無く、職務上の同僚の域を出ませんでした。“事件”は終わらない…。
絶望が漂う結末に衝撃を受けました。何かしらの希望を提示して終わるのが当たり前みたいに思っていたので、とても印象的でした。これが現状なのだと突き付けられた感じでした。