劇場公開日 2019年3月22日

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「メッセージがのるエンターテインメント」ブラック・クランズマン 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5メッセージがのるエンターテインメント

2020年7月11日
PCから投稿

コメディだと思っていると諸処に啓発が表れる。集団リンチを語る集会やエピローグはドラマの一貫性を破ってメッセージを伝えてくる。もっともコアな部分に食い込む話でもあり、監督自身、冷静に語ることができなかった感じがあった。

もともとスパイクリーは(個人的には)一貫性のない監督で、思い浮かべたとき「こんな感じ」の映画を撮る人──との像が定まらない。商業主義もあるし、アーティスティックなのもあった、バイオレンス描写に与する感じもあれば、親子間・恋人間の悲喜劇もあった。玉石混交だが、外しても、そう無茶な外し方はしない。だが振幅が大きく、大味な印象がある。

ジョーダンピールのようにスパイクリー以上にスパイクリー的なことを、洗練されたスタイルで語る後継者も現れていて、正直なところ器用貧乏を感じない──ではない。
ただおそらく監督がいちばん描きたいのは、Do the Right Thingのような人種間に跨がる偏差だと思う。マルコムXや本編もその本領にある。

本領だが、当事者でもあるゆえに映画にエキサイトが表われてしまう。Do the Right Thingを支配していたのは怒り以外の何ものでもない。その意味で返す返すもジョーダンピールは冷静なのだ。

わたしの周りには日本人しか見あたらず、アメリカの人種差別について、それを云々する資格も知識も立場でもないゆえ、映画としての言及だが、冒頭のDis Joint is Based Upon Some Fo' Real, Fo' Real Sh*tから、潜入調査をブラックスプロイテーション風におもしろおかしく語るのかと思っていると、それが一貫しない。
いい顔のJohn David Washingtonとアダムドライバーで、もっとすごいところへ着地したかもしれない──と思わせる映画だった。

ただし映画はちっとも悪くないし、本国で称賛されてもいる。
のん気な笑える空気感を放つJohn David Washingtonが楽しくて、ダンスシーンに躍動を見た。
日本には関西人が関東人の関西弁を見破ることができる──というのがあるが、白人と黒人の喋りの差はもっと根本的な差であろうと思う。
ロンの白人英語がばれなかったのは、両刀遣いが相当に希有だからだろう。フィリップが黒人の口調を真似るシーンで、それが白人には絶望的に不可能なのが、よく解った。

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津次郎