「あのヒロインのどこに惹かれたのか?」ブラック・クランズマン モグワイさんの映画レビュー(感想・評価)
あのヒロインのどこに惹かれたのか?
アダム・ドライバー良かったです。
この映画を観て良かったことのメインはアダム・ドライバー。
まず、映画としての完成度が許しがたいほど低い。
それは主人公の選択についての動機がことごとく欠けてるのが主な理由と思われ。
警官になった理由も目的も分からないのでカエルと言われて我慢してる理由も分からず、またKKKへの電話も唐突で出世欲なのか世直しなのか聖戦のつもりなのか分からず、あまり気が合っているように思えない活動家の女性(ヒロイン)にご執心な理由も分からず…
心理描写だけでなくストーリー設定も、何も危険を犯して2人で1人を演じる必然性がわからず、途中から電話も白人警官がやって1人で潜入した方がうまくいくんじゃね?と思わせられるし、KKKの理事の警護に黒人警官をあてる理由が弱すぎて…作品を通して、納得感が全然なかった。
実際の話に基づいてるって言うから、渋々自分を納得させて先へ進んだ感じです。
そして、主人公の行動原理が分からないまま、設定の必然性が感じられないまま、観客はどこへ連れてかれるかというと、
黒人(被差別)が、白人(差別する側)に一杯食わせてやったぜ!ハハ!という、してやったり!痛快!という浅い着地点で、
そんなに感情移入できてないこちらとしては、まぁそうなりますよね、という結末に白けるだけでした。
もっと笑えるところやハラハラするところを設けたり、心情を丁寧に描いて共感できるものになってれば違ったと思うんですが、
結局、被差別側の溜飲を下げるためだけのストーリーになっちゃってるんじゃないかなぁ、
粗暴な白人や頭の弱い白人を目立つポジションに登場させてることにも現れているし、ヒロインが持つ偏見(copの中に1人差別主義者がいるから全員pigである)はお咎めなしだったり。
それって結局、白人への憎しみありきになってしまってるわけで、、、うーんそういうことでいいの?なんだかなぁ。
最後の数分で現代の実際の事件の映像などがたたみかけられるのですが、そっちをメインにして欲しかったと思います。
私たち日本人も“colored”なわけですが、これをもし日本人が撮っても、カンヌでスタンディングオベーションなんてされないだろう。
作品そのものが評価されているのではなくて、作者の出自やイデオロギーも含めての評価なんだと思います。
映画は、娯楽でもありながら社会に一石を投じる役目も担っているので、そのような評価に私は反対しないですが、
この作品よりもっと上手にこの問題を伝えられる作品はあるように思います。
(しかし一方で、スパイク・リー監督にとっては、この方法しかない、というのもよく分かります)
そんな中、アダム・ドライバー演じる警官が、
潜入捜査を通じて自身の人種に目覚めたというところはとても良かった。
アダム・ドライバーは見せ場も多かったように思うし、人物像がちゃんと深掘りされてる感じがあって、好演。
『パターソン』また観たくなった。
作品は個別に批評すべきと思うものの、テーマとタイミングが重なってしまったので、どうしても『グリーンブック 』と比較して観てしまった点は、申し訳なく思う。
追記: ヒロイン役の女優さん自身はめちゃキュートで魅力的です『スパイダーマン ホームカミング』のヒロインです
★5 最高に気に入っていて、今後も繰り返し観るべき作品
★4 とても気に入っていて、また観返すであろう作品
★3 気に入っていて、機会があったら観るかもという作品
★2 いい映画だとは思うが、私はもう観ないであろう作品
★1 自分の好みでもなく、人にも勧められないと思う作品
★0 酷い、映画に対する侮辱、謝れ、観なければよかった