存在のない子供たちのレビュー・感想・評価
全165件中、141~160件目を表示
世界の矛盾が子どもに集約される
是枝監督『誰も知らない』へのオマージュ作品と受け止めました。
子どもの演技と、その子どものリアルが重なると
どんな名優の演技をも超える何かが生み出されるような。
ドキュメンタリーでは描き切れない、
フィクションでは届かない
リアリティーがそこに立ち現れる。
それは、奇跡的な、という言葉で形容したくなるものではあるのですが、
そうではなく
その映画を生み出すスタッフの
為せる技なのだと、
素人ながらに、解釈します。
シリア難民
不法就労移民
レバノンの家族の貧困
届かない救済
そんな社会・政治状況をにじませながらも
その中で生き抜く少年ゼインに
監督の目は向けられています。
ゼインから見える世界の不正義の象徴は
子を育てる責任を果たさないのに子を産む親。
自分を産んだ親。
でも、その親も弱々しく言います。
私たちは被害者だ。
遠いレバノンの現在に
思いを馳せながら
この国の現実にも
思いは至りました。
☆の虚しさ
フィクションとして映画としてこの作品を世に出した監督、制作陣、配給元が存在しなければここまでリアルに垣間見ることのなかった現実。研ぎ澄まされた感性と深い知性で構成されていくシーン、カット、セリフが秀逸。ただし星をつけるような娯楽作品と同一線上にはないので真ん中の☆☆☆。ホントはつけたくない。
誰が悪いの?
キツい映画だった。
極端な要約すると愛もなく責任もなく産んだ親を子供が訴えたという話。
両親の中に本当に愛はなかったのだろうか?妹の結婚も見返りはあったのだろうが向こうの家では今よりマシな生活ができると思ったのも本当だろう。あんなことになるとも思わなかったのだと思う
両親が悪い。雑貨屋の兄ちゃんが悪い。不法移民の親が悪い。偽造免許のおっさんが悪い。ゼインも悪い。皆が悪い。でも皆自分の世界で一生懸命生きているだけなのかもしれない。
日本人の常識では考えもおよばない深い問題があるのだろう。それでもこの問題を世界が知ることが大事なんだろう
面白かった!感動した!では片付けられない。
とてもキツい映画だったがゼインの笑顔に救われた。
観てよかった
追記
はるかに恵まれたこの日本で生活に困っていない親が子供に手をかける。そちらのほうがよほど悪いとも思った
衝撃的
ゼインが両親を訴える裁判から始まって、なぜそういうことが起きたのか、ということをさかのぼって描いていくんだけど、ゼインは、環境が違えば全く別の人生だったんだろうなあと思うと、とても胸がしめつけられました。
妹おもいだし、頭もいいし、サバイバル能力あるし、とても人間力がある子だと思う。
ただ最後の笑顔に救われました。彼の人生は、これから先のほうがずっと長いんだから、いい未来が待っていることを予感させてくれました。
この映画で心が動かされない人はいないはず。
観終わって、電車に乗っている今でも、最後のゼインの笑顔を思い出しては涙が止まりません。
生まれて初めて自分のIDが作られるのが、刑務所の中という皮肉。
感想を言葉にするにはあまりにも私の語彙が足りませんが、「みんなに好かれて、尊敬される立派な人になりたかった」と、12歳で人生を悟り、諦めるなんてこと、どの時代どの国にもあってたまるものかと…悔しくて涙が出ます。
まるで嫌なドキュメンタリーでも観たかのようなリアルなカメラワークと演者の演技も秀逸です。
素晴らしい作品でした。
ゼインの強さ
邦題に惹き付けられ、更に中東の社会問題を
描いた作品だと知りずっと気になっていた作品。
キャッチコピーから想像すると法廷劇なのか?
日本版ポスターに写る幼いこの少年が何をしたんだろうか?
とにかく心待ちにしていた作品。
と同時に果たして作品の重みに自分は耐えられるのだろうか心配も
あった本作。
結論から先に。
涙無しには観ることの出来ない素晴らしい作品。
125分があっという間で感動で心が充たされました。
泣けるから作品が良いとは限らないですが、
想像以上の奥深い物語の展開、主人公ゼイン少年の美しさ瞳を
通して映し出される世界観、様々な問題を抱えるこの地域の厳しい
現実に焦点を当てながらも生きることに対する揺るぎない逞しさ、
そして純粋さがこの作品にはあると感じました。
この作品には幾つかの涙も存在します。
それぞれの涙を通して社会問題を
見せつけられるし、個人的に感じたのは母親の辛さと強さ。
またこの作品の魅力は厳しい現実の重苦しさ一辺倒では
ないところでしょうか。
こういう作風に仕上げられるのはナディーン・ラバキー監督のセンスなんでしょうね。
彼女の今後の作品にも注目したい。
そしてゼインを演じたゼイン・アル・ラフィーアくん、
彼のピュアで力強い瞳の先に何があるのか是非スクリーンで
体感していただきたいです。
切なく胸が張り裂けそう。観るべき作品。
レバノンに逃れて来たシリア難民の子供達の生きる姿に胸が張り裂けそうになりました。
ただそんな絶望の中にも、時折見せる子供達の無邪気な姿にクスッとしたり。主人公ゼインを演じるゼイン・アル・ラフィーアくんの終始悟りきった、野良犬の様な瞳に魅せられました。
社会問題と言う意味では是枝監督作品の子供の瞳と相通ずる物がありました。
子供が守られる法的秩序が有るのは、ほんの一部の先進国である事を実感。そう言う意味で一人でも多くの人がこの現実を認識する事により、大きな意味が生まれる作品だと思います。
大ヒットして多くの人に観てもらいたい。
女性監督だ…
納得。こんなに厳しい子供目線な現実世界は女性ならではかも。世界は広くてこんなにも過酷な環境の子供達もいるんだな、と。お話も衝撃的だけど主人公の子役がすごいな。セリフも少ないのにひしひしと感情が伝わってきたよ。
観る覚悟が必要かも。
子供にはあまりにも過酷な現実を生き抜いていきながら、彼の持つ揺るぎない信念のようなものには、自分の生ぬるさを突きつけられているようでもありました。
淡々とした描写が、苦しくなるほどにリアリティを増していく。
最後の少年の表情にほんの少し救われました。
強烈なメッセージに圧倒される
大人がいかにずるく、大人というだけで信用を得ることができる存在なのかを思い知らされる。
その「おかしな社会」のなかで、ジッと大人たちを観察し、批判し、判断してきたゼインの決断にとにかく圧倒される。
もう、騙されない!そんな言葉では、納まりがつかない、決着をつけようとするゼインの覚悟に圧倒される。
この映画の展開の素晴らしさ、シナリオの的確さ、ゼインのキャスティング、そのどれをとっても監督の強い意志が現れている。
とにかく、素晴らしい。
どこの国も、貧困と搾取、児童虐待は深刻なのだと。
そして、「育てられないならば産むな」
というメッセージは、当事者の子どもにしか言えないことなのかもしれないとさえ思う。
「育てる」ってどういうこと?
何が必要なのか。
最低限、ただ一つ。
一緒にいても、離れていても、ただ一つ。
それがあっても、育てることはできないかもしれない。
けれども、それがなければ、他に満ちていても育たないんだろう。
監督の次回作に期待です!
命あるものの怒り
物語として、フィクションとしてだからこそ昇華された迫力があった。
貧困や人種差別、宗教対立、戦争や移民の問題で、出生届すら出されておらず、「存在しないことになっている」ため、基本的な人権が与えられず、教育、愛までも受けることができない子どもたちがゴロゴロいる。
映画の舞台となったレバノンだけでなく、今の「中東の現実」を映し出していた。
主人公の少年の怒りは、自分の両親だけでなく、子どもに救いの手を差し伸べることのない、国、世界、社会そのものへ向いている。
レバノンだけでなく、世界中で国籍も戸籍もない子どもたちがいることを、映画から強く訴えていた。
それを体現した、子役(ゼイン役)のゼイン・アル=ハッジの演技がすごい。
ゼイン自身がシリア難民の子で、自身の体験と役柄に重なる部分が多かったからからなのかもしれない。
裁判シーンも、本物の裁判官に演じてもらったそうだ。
是枝監督かよ!って言いたくなる感じの作りではあったが、奴隷や臓器目的の人身売買組織まで出てくるあたり、日本の比でないレベルで闇の深さが半端なかったです。
傑作のひとつとして、おすすめ。
両親の身勝手さを息子自らが法廷で訴えた秀作
レバノンを舞台にした作品だけに、息の詰まる作品であった。ゼインが法廷で発する言葉の一つ々々が驚きであった。極貧生活を強いられる家族のいきつく暇のない毎日に、観ている自分も、とてもじゃないが平常心ではいられない。暮らしを楽にしようとサハルを「身売りまでして」自分たちの生活を守ろうとする。戦前の日本も、世界恐慌の煽りを受け、自分の子供を売りに出して生活していた。そんな時代が、未だ平然とおこなわれいるとは、あまりにも酷な時代に生きていることであるし、このような時代に生れてこなけれいけない、逃れられないということには、世間は変わりつつあると思われていたが、それは先進国のことであり、貧富の激しい国においては何ら好転していないことに身につまされる。
ゼインの「僕は今、地獄を生きている」という逃れられない現状を、私たちは、「映画」という媒体で、氷山の一角として知るしかないことに、ただの「虚しさ」と、本当に存在する「カオスの世界」を垣間見ることだけしか出来ない。そして、自分がいかに非力であるかを思い知らされた。
存在のない子どもたち
レバノンのことをテーマにした作品は今回が初めてでした。
西洋から見たレバノンなのかもしれないと監督さんの名前を見たときに頭をよぎりました。
貧困や戦争が1握りの武器商人や関連企業そして政治家たちを儲けさせる限りこの世から貧困や戦争といったものがなくならない切なさは常日頃感じつつ、
自分自身も食べ物を食べ過ぎて太っていたりする現実の狭間に決してこの世の中の不条理に加担していないわけでは無い事実に自己嫌悪にも陥ります。
日本にも戸籍のない子供がいるとニュースや新聞で見聞きし何か自分自身でもこの問題の解決に役立てることがあれば募金であっても参加していきたいと思っています。
日頃の自分の生活は偽善者的であっても人間は誰1人として完全な善人完全な悪人はいないので自分を否定せずできる範囲で社会に貢献していきたいと思いました。
主演のゼイン・アル=ハッジくんが素晴らしい
中東の貧困・移民問題を、12歳の少年の目線で描く人間ドラマで、過酷な現実を描く内容だが、少年の優しさと賢さと誠実さを応援したくなる。
とにかく主演のゼイン・アル=ハッジくんが素晴らしい。
彼の演技と存在感で驚くが、本物のシリア難民で、演技経験は無いらしい。
スラムの俯瞰撮影やベイルートの朧げな景色や時代遅れの遊園地などの情景も印象的。
世話できないなら、産むな!
また1つ、児童婚や児童労働という貧困がテーマの映画が出たという感じだが、「世話できないなら、産むな!」という少年のメッセージは過激だ。斬新な切り口で、他とは一線を画するテーマ内容である。
また、2時間たっぷりあるにもかかわらず、1カットどころか、1フレームの無駄すらない展開。俳優の一つ一つの所作も、計画され尽くされている。そういう技術的な面でも感心した映画だった。
孤独な少年の、両親への反抗。ラストは賛否あると思うが、心に刺さる名作であることは間違いないだろう。
ゼインの守りたかったもの
観終わったあと、ラストシーンが残像のように残った
劇場を出るときに、壁に映画のシーンのパネルと共に記載されたコメントを読んでいたら、町山さんのコメントが、胸にズシンと来た
きっと、観る前なら、そこまでは響かなかったコメント
ゼインを演じるゼインの、その瞳
ゼインを始め、映画の中の人物と似たような境遇の人たちが演じていると聞いていたけれど、その瞳の力のなさが胸に突き刺さる
誰かが悪いわけではない
訴えられた両親たちもまた抜け出ることの出来ない日々の中にいる人たちでもあるから
まさに負の連鎖のような状況
それでも、ゼインが両親を訴えてでも守ろうとしたものに、胸が詰まった
不思議なことに、希望のかけらもないはずの現状の中、それでも何か微かな明るいものが見えるように感じるのは、ゼインのおかげだろうと思う
その小さな身体で、世界の広さも知らない視点で、全てを諦めたような瞳で、善と悪の違いが存在しないような場所で、妹を、赤ん坊を、必死で守ろうとするその思いやりや優しさのおかげ
心に重く、深く、残る
凄い…
うまく言葉にできないのですが、ゼインの強さと優しさに、誰がこの子を守るんだ…と、ただただゼインを抱きしめたくなるというか…。
世界によって環境が全然違うので日本に生まれた時点でわたしたちは恵まれているということは確かなのですが、
ゼインの 世話できないなら作るな という訴えは一人一人が意識しなければならず、この映画が世界中の多くの人に届き響くと良いなと思いました。
普段はハッピーな気分になる作品が好きなので、久々にこんな気持ちになる映画を観ました。
でも暗い気持ちになるとか悲しいというよりも、凄く良いもの観た、という感じで、改めて映画って素晴らしいなと思いました。
全165件中、141~160件目を表示