「複雑な背景を持った民族を題材に普遍的な人類の間違いを描いた」バハールの涙 ローチさんの映画レビュー(感想・評価)
複雑な背景を持った民族を題材に普遍的な人類の間違いを描いた
イラク北部のクルド人自治区のヤズディ教徒の女性兵士が描いた作品なのだが、このヤズディ教徒の置かれた政治的立場がまず複雑だ。まずイラク政府とクルド人の対立がある。独自の国家を持たず国境をまたがって自治区を構成しているクルド人は自分たちの国を持つのが悲願だから周辺濃くと常に緊張関係にある。クルド人の大半はムスリムだが、そのクルド人の中の少数民族がヤズディ教徒だ。彼らはしばしばムスリムとは対立関係になるので、少数民族の中のさらなる少数民族のような立ち位置で、中東の民族だがムスリムではない。そのため、イスラム系武装勢力とはしばしばぶつかり合う。
しかし、本作で描かれるのは戦場での性搾取に立ち向かうために武器をとった女性たちだ。性的搾取は、世界のどこでも起きている「普遍的な間違い」である。主人公は家族を奪われた。奪われたら人は戦うしかなくなる。人類史の繰り返すの過ちを強烈なリアリズムで描いた傑作だ。
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