「不穏とユーモアの奇妙な味わいがある」ドッグマン しろくまさんの映画レビュー(感想・評価)
不穏とユーモアの奇妙な味わいがある
ほとんどの登場人物に感情移入できない。
行き当たりばったり、問題はあるのに、誰もそれをなんとかしようともしないで、破滅的なラストに向かっていく。
経緯にも結末にも、救いはない。
冒頭の吠える猛犬からして不穏。この、クサリにつながれた犬は主人公の悪友シモーネの象徴。
舞台となっているのは、イタリアの荒れた田舎町の風景。そこに、このシモーネという存在がいる、というだけで景色が不穏に見えてくる。
これは主人公の心象風景そのものである。
コンテストに入賞しても不穏。海に入っていても何か起こるんじゃないかと思えてくる。
本作は終始、不穏な雰囲気に覆われ、心休まるときがない。
それにも関わらず、どことなくユーモアがある。
これが、なんとも言えない、奇妙な味わいである。
犬はかわいい。
犬本人(?)は何かに必死だとしても、それを見る人間は、彼らの本心など分からず、いつも見下ろしている。
スクリーンを通して観る僕たちにとっては、主人公もシモーネも町の人々も、犬でしかない。
僕たちは町で見かける犬のように、彼らを見てしまう。
これがユーモアの根源ではないか?
カメラは登場人物のアップか、引いた構図が多い。特に後者の引きの絵が、ザラついた白黒写真にも似て見事。
コメントする