劇場公開日 2019年3月22日

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「「ルール」の為ではなく、「人」の為に」ビリーブ 未来への大逆転 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5「ルール」の為ではなく、「人」の為に

2024年4月16日
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鑑賞方法:DVD/BD

公民権運動があって、キング牧師がいて、ルースがいて、今がある。そして今はまだ抱いた夢の途中だ。
人間が「男女」という選択不可の境遇で公平な利益を得られないこと。そんな世の中を変える確かな一歩、その第一人者とも言えるルースの、半生を描く物語。

この映画、フェリシティ・ジョーンズ演じるルースの魅力もさることながら、夫マーティンを演じるアーミー・ハマーが反則級の魅力マックス男子である。
いち早くルースの飛躍に繋がる案件を教えてくれるし、子育てや家事にも積極的に関わり、妻に対する尊敬と愛情に溢れた理性的な男性。
「お前はユニコーンか?!」と思うほどの世界に一つだけの理想の夫。女性レビュアーさんとおぼしき方々が「心底羨ましい」と絶賛するのもうなずける。男性レビュアーさんだって「どうだ、男も捨てたもんじゃないだろう」と内心鼻高々なのではないだろうか。

こんな事を書くと「マーティンあってこそのルース」みたいな誤解が生まれそうだが、そもそもマーティンがこんなに妻を尊敬しているのは、自分の人生最大のピンチを救ってくれたのが他ならぬルースだからだ。
ハーバード時代、病に倒れたマーティンの為、ルースは看病・家事・育児・自分の勉強にプラスして、マーティンの分の講義まで受講していた。
肉体的な回復を支えるだけでもハードな状況で、夫の将来までも救おうと奮起するルースもまた「お前はフェニックスか?!」と思うほどの世界に一つだけのスーパーガール。
つまりこの二人は「マーティンあってのルース」であると同時に「ルースあってのマーティン」なのである。

この映画で描かれているのはルースが手掛けた最初の裁判で、その勝利のもぎ取り方は「最高のかたち」とは言い難い。
だが変わっていく時代、変わっていく生活、変わっていく社会にあわせて、「それはおかしい」と思った人々がルールを変えられる大きな土台になった。
ルールが定められたとき、そのルールは確かにその時生きている人々に寄り添おうとして作られたのだろう。その善意を否定しようとは思わない。
だが、社会の変容にあわせてルールが変わらなければ「善意」は「足枷」になってしまう。
ルース・ギンズバーグ最大の功績は「ルールが弱い人々を苦しめていると感じたら、ルールの方が変化すべきなのだ」と知らしめたことにあると思う。

人類は暑さや寒さ、食料の確保、その他生き延びるための様々な事を、道具や技術をアップデートすることで柔軟に対応し、乗り越えてきた。
ルールという道具もまたアップデートしていくことで、すべての人々が生きていける社会の基になるのだ。それが当たり前の世界になるにはまだまだ時間がかかりそうだが、その道のりの中にはルースとマーティンが残したものが、確かにある。

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つとみ