「係争中」ビリーブ 未来への大逆転 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
係争中
ちょっと色々考えさせられる。
好感が持てるのは「男女平等」の肯定的な意見だけではなく、否定的な意見もしっかりと盛り込んである事だった。
肯定的な側面だけ描かれていたならば、ヒステリックと書いたかもしれない。
男女平等は幻想だと思ってて…やたらに権利だけを主張する時流にうんざりともするんだけど、この映画を観てちょと変わった。
「選択の自由を平等に与えるべき」って事だったんだな。
それならば凄く得心がいく。
そこから先の変化はオマケなんだな。
その選択を保護や保証できるような社会を整備していってるわけだ。
そして今も変化の途中なわけだ。
安定しているわけではなく、ガンガン世界は変わっていく。
言ってしまえば、その変化の原因だ。
…未来において「元凶」とならなければいいのだけれど。
対立する弁護士たちは口を揃えて言う。
「未来の子供達の為に勝たねば」
一方は女性の社会的地位の確立を。
一方は家庭の崩壊を。
前者はここで語らずとも何度も耳にする。
後者はかなりダイレクトな問いかけだった。
「ただいまと帰って来た子供を誰が迎えいれるのだ?子供達に寂しい思いを強いるのか?」
作品は語る…「今後、数千年の未来に関わる判例になる」と。
今、まさに変化のウネリの中にいる。
拡大解釈かもしれないが、少子化が進む原因の一端なのかもと思う。
セクハラやパワハラなんて言葉は生まれなかったかもしれない。
…子供の自殺とか、幼児虐待も減っていたかもしれない。
そう思えば、人の営みを根源から覆したと言えなくもない。
そのかわり女性が社会に進出した事によって築かれた恩恵も功績も享受できんが。
今は変革の途中なんだろうと思う。
その壁をぶち壊した事によって吹き出したウミを取り除いている最中なのだと。
ただもう後戻りは出来ない。
変わっていくしかない。
受け入れる他、術がない。
人類の意識を変化させた偉人になるのか、人類を滅亡の危機に直面させた大罪人になるのか…当事者達は、そんな事まで考えなかったとは思われる。
ただ、当時の女性達が置かれていた環境を思うと、偉業なのは間違いない。
選択の自由は権利としてあって然るべきだ。
その結果、折り合いがつかない事も出てきて当たり前だ。自由なのだから。
前出の帰宅時の子供の事にしたって、女性じゃなきゃダメって理由などない。
どっちが居てもいいんだ。
だが、しかし、どっちもが居なくてもいい理由にまで波及させちゃダメなんじゃないかと。
履き間違えちゃいけないのは、どっちかが居れる環境にしていこうって事なのだと思う。
そうする為の折り合いであり、着地点をそれ相応の代償を払いながらも探している途中なんだと思う。
ラストに出てきたご婦人はご本人なのかな?
穏やかな表情ではなく、ご高齢になっても険しい顔をされていたので、まだまだ彼女は戦っているのだなぁと思う。
そりゃあ相手が数世紀を経た歴史なんかでもあるので、この牙城を崩すのは並大抵の事ではないのだろう。
まだまだ答えは出ないんだろうな。
今の世の中が少なくとも破滅や破綻に向かってない事を祈る。
なんていうか、女性が社会に進出できなかった理由は「女は家庭を守るべき」って事ではなくて「子孫を維持する為に、女性を家庭で守るべき」ってのが発端だったような気にもなる。
それほど尊い存在なのだと。
まぁ近代社会において命の危険に晒される事も、まずないんだけどさ。
なんかそんな事を色々考えたなぁ。
いゃあ、色々根深いなぁ。