「性差別撤回を争った社会派エンタテインメント」ビリーブ 未来への大逆転 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
性差別撤回を争った社会派エンタテインメント
1950年代はじめ、ユダヤ人家庭に生まれたルース・ギンズバーグ(フェリシティ・ジョーンズ)は晴れてハーバード大学の法科学生となったが、この時点で彼女は既に同じくハーバードに通うマーティン(アーミー・ハマー)と結婚し、子どもも授かっていた。
女性には弁護士への道は閉ざされていた時代。
彼女が得たの職は、黒人差別とのバーターのような黒人教授の代用としての教授職。
それから日は経ち、1970年代、世はベトナム戦争反対の嵐の中。
そんな中、彼女にある裁判を争う機会が訪れる。
それは、母親の介護費用を必要経費と認められなかった男性を原告にしたもの。
当時、介護費用を必要経費として認められるのは、税制上、女性に限定されていた・・・
という物語で、人権問題を扱った社会派映画だけれど、それを米国流のエンタテインメントとして魅せていく作品。
映画は、とにかく、脚本がよく練れている。
そりゃまぁ、ルース・ギンズバーグは実在の人物(それも存命中)だし、争った裁判も実際のものだけれど、それを、そこまでも含めて、どう見せていくか、というのが映画をつくる側の腕の見せ所。
本題の裁判に入るまでに、ルースが置かれた境遇を巧みに、じっくり、かつテンポよく描き、中心となる事案を、女性の問題としていないところがホント巧み。
原題「ON THE BASIS OF SEX」(性に基づく)のとおり、性差は文化であり、両性をどうとらえ、どういうように扱えばいいか(正しくは「都合がいいか」)という考えに基づいている。
そこのところを、有無を言わさぬように、原告が男性、という点で、突破口が開けたとのだと改めて思う。
いつもは、やや硬質な(というか能面のよう)感じで、あまり演技に奥行きを感じさせないフェリシティ・ジョーンズだが、今回は好演。
生来の硬質なところに加え、若干のメイクが今回は功を奏している。
アーミー・ハマーは相変わらず声がいい。
この声で弁が立つとなると、弁護士にうってつけ。
アカデミー賞作品賞を受賞した『グリーンブック』に引き続いてGAGA配給だけれど、同じような路線で観るといいかもしれない。
ただし「未来への大逆転」というサブタイトルは、いただけない。
最後の最後に、ルース本人が威風堂々と登場します。