劇場公開日 2020年3月6日

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「スタアは彼方に。」ジュディ 虹の彼方に ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0スタアは彼方に。

2020年3月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

怖い

ジュディ・ガーランドといえば「オズの魔法使い」のドロシー役で
未だに崇拝される大スターでありながらも本人は47歳の若さで急逝。
その晩年の期間にスポットを当てていることから華々しさはないが、
最近ご無沙汰だったレネー・ゼルウィガーが見事に彼女を演じている。

顔立ちそのものが全く違うので瓜二つではないけれど、額に刻まれた
皺とクシャクシャ顔で笑う彼女の表情は健在で、より哀しみが増した。
歌声は見事にシンクロしており、多くはないが名曲が幾つか使われた。
往年のファンがご健在ならば、懐かしさに浸れる。自身はリアル世代
ではないので、娘のライザ・ミネリ(ヴィンセント・ミネリとの子供)
が「キャバレー」で受賞したことの方がまだ近い記憶という感じだが
それらも含め、彼女の初期の作品などはビデオ映画でほとんどを観た。

何よりその天性の歌声とパフォーマンス力、決して美人ではないけど
(ゴメンなさい) その顔で近しいスタア(スター)としての地位が築けた。
レインボー・フラッグが同性愛者解放運動の象徴として用いられるのも
ドロシーが歌った「虹の彼方に」に由来していることから、今作でも
登場するゲイ・カップルが重要な役割を占めている。彼女の行動癖は
決して褒められたものではないが、人々を差別しなかった人柄は鉄壁。
未だにゲイ・アイコンとして不動の地位にいる彼女らしい気がする。

そんなこんなで晩年の彼女はステージ以外は見る影もない落ちぶれた
雰囲気を纏っていたけど、子供時代から与えられた薬(実は覚醒剤)で
ドラッグ漬けにされ、昼夜を問わず働いて、精神のバランスを崩して
何度も結婚、離婚、自殺未遂を繰り返した人生を振り返ればなるほど、
と思えてしまう。夢を叶えてスタアになれたとはいえ、彼女が多くを
捧げたハリウッドで、本当の虹の彼方を見ることはできたのだろうか。

パワフルで、ゴージャスで、奔放にふるまう傍らで見せる彼女の涙と、
小さな小さなケーキの一片を「おいしい、、」と呟いた笑顔に泣いた。

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ハチコ