「男の可愛げと家族の絆」ゴールデン・リバー しずるさんの映画レビュー(感想・評価)
男の可愛げと家族の絆
ここのレビューなどで、ステレオタイプな西部劇やクライムサスペンスを期待してると肩透かしになるという予備知識は得ていたんだけど、それでも消化不良に終わってしまったなぁ…。
多分、教訓とか深いテーマ性を求めて見ない方がいいんだろう。
男達の、人生、夢、ロマン、格好よさ、可愛らしさ、少年性…などに、家族の物語と胎内回帰的な救いを絡めた、男の賛歌的な感じ。
そういう男達のキャッキャしてるの嫌いじゃない筈なのに、イマイチ萌えきれなかったのは、多分登場人物に思い入れできなかったから。
まず序盤暫く、キャラクターの把握ができなかった。兄弟のどちらが兄で弟なのかも解らなかったし、髭で判別していたらチャーリーとモリスがこんがらかる。まあこれは単純に私の判別力のなさが悪い。
ようやく2チームの立ち位置を把握した所で、モリスが唐突かつ性急にウォームに寝返る。この二人、後に相当親密な愛情を抱いていたような台詞もあるが、何があっていつの間にそんなに距離を縮めたのか?いまいち納得がいかない。原作には書いてあるのだろうか…。
対して、シスターズ兄弟の、タイプの差異や、父親との確執、愛情と煩わしさが入り交じる複雑な心情は丁寧に描かれている。が、盗みと暴力、男臭さに満ちた世界。理解はできるが、感情移入は私には余りできなかった。
四人が合流すると、各々パートナーをずらした交流が描かれる。粗野で疑い深いチャーリーとインテリで理想家のモリス、人たらしなウォームと情の深いイーライ。四人の関係やバランスに変化が起こり、いよいよ面白い展開に…?と思った途端に、2名脱落。
もとより兄弟中心の物語なのかも知れないが、モリスとウォームのキャラクターについては、オイシイ要素も多く垣間見えていただけに、惜しい!そこもうちょっと掻き込んでくれれば…、としか。まあ、アッサリ加減がフランス映画らしいと言えばらしい。
欲が破滅を招き、追い詰められ、息を殺すうな逃避行。これは良かった。根元を絶たねば未来はないと、決死の思いで立ち向かう兄弟。と、何のラッキーか、おもむろに黒幕は消え、追手も消える。
…え、これは何の寓意?それとも笑い所なの?…と、完全に置いてきぼりを食らってキョトン。
そしてあのラスト。傷つき疲れた男達の帰る所は母の胸、本当に欲していたのは家庭での安息だった、という事でしょうか?それはそれでいいんだけど、兄弟に感情移入できてないから、はぁ、そうですか、まあ良かったね…としか思えず。
結局、私のツボとはずれていた、という事でしょうね。そういえばヤクザ物とかも苦手なんだ私…。
いかにも西部劇的な、正義の味方が悪を打つ構図にせず、人間らしい欲や弱さ、人生の迷いや理想にグラグラ揺れるリアルな人物像を描いている所はいい。
それを演じる豪華俳優陣の演技力や魅力も充分だった。ただ、俳優が誰かよりも、役所や物語に注視して見てしまう癖があるので、正直後で調べるまで、そんな有名所が揃っていたとは知らなかった。
暗いトーンで写される荒野の風景、野外や西部の街のシチュエーションも楽しめた。雰囲気とビジュアルはきらいじゃない。