劇場公開日 2018年10月13日

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「ポップカルチャーの背後にあるもの」アンダー・ザ・シルバーレイク nagiさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ポップカルチャーの背後にあるもの

2018年10月21日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

世の中にはいつの時代もポップカルチャーが蔓延っていたが、陰謀論などの「その背後にあるもの」を見ようとしなくなったのは一体いつからだろうか。
ヒットソングに隠された暗号、謎の連続殺「犬」事件、有名市長の謎の失踪、、、これらが全て繋がっているとしたら?このような考えは何故失われていった?SNSによる匿名の人間たちによる淘汰?

ロバート・ヴェンチューリはディズニー以上に人に望まれる建築を建てた者はいない、と語る。ある意味それは正しい。ディズニーワールドはポップカルチャーの集大成のようなものだ。しかし、ファンタジーが溢れる表向きの構造に対して、その下部構造の存在に注目する人間がどれだけいるだろうか。すなわち、我々が楽しく遊んでいる裏側には、上下水道の配管や、電気設備、またスタッフのバックヤードなどが存在し、ファンタジーを下から支えている。下部構造なしでは上部構造はありえない。下部構造のみでも退屈であるから、これらは相互補完的な関係にあると言える。

この下部構造に対して無関心になりつつある現代人への問題提起としての本作と捉えてみてはどうだろうか。ポップカルチャーが蔓延るその背後には、何かが動いているという認識。何にでもお金がかかるようになってしまった消費の都市。消費の背後には必ず生産があるという事。この世の中の構造基盤を見えずして、進歩はあり得ないのではないか?いや、そもそもポップカルチャーが必要とされるような退屈な世の中が問題なのか?

サムは見つけた。ポップカルチャーの背後に蠢く何かを。仮にそれがクスリによる幻覚だとしても、例え奇跡の発見と思われた事が何でもないモノだったとしても、無関心よりは遥かにマシなのである。

映画鑑賞もそうだ。映画の背後にあるものは何か?そう疑ってみる事が必要なのだろう。

nagi