「同じ人生を歩んできた男たちのドラマ」ハンターキラー 潜航せよ つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
同じ人生を歩んできた男たちのドラマ
予想以上に面白かった。潜水艦は一度潜ってしまえばもう外には出られない。一番の長所がそれ即ちリスクになるので、緊迫感が尋常じゃないのである。
つまり「潜水中」という設定が既に何割かの面白味をプラスしている、勝利を約束された映画なのだ。
この映画の良いところはとにかく「オッサン」しか出てこないところだ。右を見ても左を見てもオッサン。
地上部隊もオッサン、助けるのもオッサンだし、助けられるのもオッサン。比較的若い男性もいるけどね。でもまあ基本的にオッサンだらけ。
それで良いのだ。昔の恋人とか、陸で待っている奥さんとか、そういう余計なエピソードは要らない。
今作のジェラルド・バトラー演じるグラス艦長が軸にしているのは「海の男」という人生である。
人生のほとんどを海で、水の中で生きてきた、というグラス艦長の、「海の男」としての連帯意識を描くのに、家族やその他の要素は不要だ。
本来陸の生き物である人間が、地面を離れて生きるリスクと、リスクがあるからこそ生まれる結束や人生哲学。それらがグラス艦長の決断を生む原動力になるし、敵味方の垣根を超える周囲の人物たちの決断へと繋がっていく。
ただ海上でドンパチを繰り広げるだけの、ありふれたアクション映画に寄らず、海で過ごす男、いやオッサンの情感あふれる人間ドラマに仕上がっている。
ドラマ面が大いに気に入ったのだが、アクション面もかなりの見応えだ。序盤の潜水するシーンで、みんな後ろに体重をかけ、少し反りぎみに立っている姿から引き込まれた。
セットの作り込みも緻密で、上記のシーンとも相まって自分が潜水艦に搭乗しているような感覚が味わえる。
地上部隊の活躍も見逃せない。
作戦司令部の目となる為、そしてロシア大統領の身柄を確保する為、潜水艦並みに息を殺してターゲットに接近する地上のオッサンたちもまたドラマチックだ。
どの切り口でも、熱いオッサンたちの生き様が堪能できる。オッサンまみれの男臭い映画もどんどん作って欲しい。それが本当の意味での多様性、なんじゃないだろうか。