「音楽とともにある日常を描く」ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス しろくまさんの映画レビュー(感想・評価)
音楽とともにある日常を描く
1998年のヴェンダースが監督した「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」の続編。
バンドのメンバーも(さらに)年を取り、また鬼籍に入った者もいて、“最後のツアー(アディオス・ツアー)”に出ることになった…という触れ込みだったので、そのツアーの演奏を楽しむ映画かと思ったのだが、そうでもない。
キューバ音楽の歴史とその背景となる政治史、そこに重なるミュージシャンたちのライフヒストリーが描かれる。
世界的なヒットとなった前作に至る経緯が描かれ、ちょっと前作のメイキングっぽい趣き。
ホワイトハウスでの演奏シーンなど、ヤマ場はあるにはあるが、さほど盛り上げては描いていない。
このメリハリのない演出に退屈を覚えるかも知れないが、その抑えた筆致に“日常性”が感じられるのも事実。
キューバのミュージシャンたちは、偉大ではあるが、超絶した存在とは違う。
世界ツアーやホワイトハウスなど特別なステージではなく、日常を過ごしながら、そこに存在しているのがキューバの音楽なのだ。
キューバのディーヴァ、オマーラはこう語る。
命を奪うことは出来ても、人から歌を奪うことは出来ない。
なぜなら、人にとって歌うことは自然なことなんだから。
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