「止まらないぜ!の方が良かったのでは?」止められるか、俺たちを マツマルさんの映画レビュー(感想・評価)
止まらないぜ!の方が良かったのでは?
若松孝二監督の名前は勿論知っていますが、若松監督の名前を意識して作品を観た事が無いのですが、昭和の有り余るエネルギーを勢いにして、突っ走った映画人のお話かなと観る前から勝手に解釈して観賞しました。
で、感想はと言うと、前半と後半で評価が違いますが、全体的にまあまあ。
作品としては何かを訴えかけてきます。
理屈ではなく、思いのままに理想に突っ走しれたあの時代を羨ましく思えます。
窓から外に向かって立ち小便なんて、今なら見つかれば警察沙汰どころか訴訟問題です。
それでも、まだ何者でもない者達が何処に向かっているかは分からないけど、とりあえず思いのままに走ってた時代。
劇中であった、ピンク映画の撮影で裸の女性が海岸で走っている後ろをカメラを持ったスタッフも全力で追いかけている。それもスタッフ全員。
この映画を表す代表的なシーンではないかと。
ホント、このシーンは印象的で観ている途中で良い映画だなぁと思いました。
ですが、後半から失速感があって、逆にタイトルが意義あり的に仇になってます。
タイトルの「止められるか、俺たちを」。前半は確かにこのタイトル通りです。
主人公でヒロインのめぐみがふとしたことから若松プロに入り、助監督として、若松プロで男顔負けに活躍していく。
周りのスタッフも負けず劣らずの一癖も二癖もあるのばかり。勿論親分の若松孝二監督は言わずもがな。
それでも様々に情熱をぶつけ、自分の信念のままに突き進んでいく。
まさしく、止められるか、俺たちを。です。
ですが、中盤辺りからめぐみの女性としての面がクローズアップされていき、葛藤のまま、自分の人生に幕を引く。
昭和45年頃の時代を駆け抜けた、一つの青春映画として観るととても面白いと思います。
女を捨てて、男顔負けに活躍するめぐみが可愛い格好いい。門脇麦さん。ハマリ役です。
ですが、めぐみの若松プロで駆け抜けた青春と言うのなら解るけど、若松プロの火の玉の様なエネルギーで駆け抜けた時代の物語と言うのではないので、タイトルと合ってないかなと。
あと若松孝二監督の存在が作中ではなんか中途半端に薄いです。
若松孝二の強烈無比のキャラクターに周りは翻弄されつつも、皆が癖のある人物で、変換期を迎える映画業界に置いて、異端ながらにも異彩を放つ“若松プロ、ここにあり”を期待してたんですが、そうでは無かったなぁ。
まぁ勝手な解釈で観る前からイメージを作りあげてしまったので、違和感はしょうがなしなんですが、もっとクレイジーで良かったのではないかなぁと。あとタイトルは「止められるか、俺たちを」よりも「止まらないぜ、俺たちは」の方がめぐみの遺志を次ぐ意味でも良かったのではないかなと思います。
多分、自分よりももう少し年上で学生運動に記憶があって、あらゆる体制に不満があって、映画に熱中した時代を過ごした方なら評価は変わるかもですが、自分的にはこんな感じです。
それでも観た方が良かったか?と言うと観て良かったとは思っています。
次は若松監督の作品を改めて観てから、観てみたいと思います。
CBさん。コメントありがとうございます。
「止められるか、俺たちを」は映画が狂い咲きの様にパワーを秘めた時代を描いた余韻の残る作品で、鑑賞から時間が経っても心のひだに残ってます。
当時の少し感想が今は変わるかも知れませんが、好きな作品の一つではあります。
また、お時間がありましたら、遊びに来て下さいね♪