「アイロニカル」止められるか、俺たちを atararuiさんの映画レビュー(感想・評価)
アイロニカル
☆湯布院中央公民館にて
若松組青春群像に若松監督とメインのめぐみさんのストーリー 若松組全体からめぐみさんにズームしていく流れは分かり易い パンフレットの座談会でも語られていましたがタイトルのことは私も気になりました 言いたいことは解るのですけど内容と比べると どこか噛み合わない部分を感じてしまって···
「止められるか、俺たちを」という言葉は若松監督のお気に入りで映画にしたかったタイトルだそうです
なのに何故 私がしっくりこなかったかというと その割には二人も若松組を辞め しかも肝心なめぐみさんは自殺(か事故かは不明)
説得力が弱くなるのは仕方ありません タイトルの鮮烈さにモーレツな勢いを期待していただけに止まってるじゃん自ら…とツッコミをいれたくなってしまったのは無理もなく逆にこれは皮肉なのかもと思った次第です
昭和の悶々とした燻った感 ビルの上から放尿する場面は痛快 アナログ感いっぱいの反骨精神 若松プロの映画が 「ここではないどこか」を探していたように昭和もまだ過渡期でした
映画の中では何をしてもいいんだという若松監督 巻き舌のニャロメ調 こんな感じの人って映画の中にしかいないよなと思っていたら実在していたお方なのだから逆に驚く
湯布院映画祭シンポジウムでの井浦さんのお話によると「心を見せてみろ」が監督の口癖であったそうでそれは今でも井浦さんの心に在るそうです
役を作ってまたいったん壊してそこから見えてくる 役を演じるには頭ではなくピュアな心が必要みたいです
監督はあちらの世界で井浦さんの演じた自分に目を細めていらっしゃることでしょう どうかな?バカヤローとかいってダメだしされてるかな(笑)
人は板挟み状態になると身動きがとれなくなって死を選んでしまうことがある めぐみさんの死は お腹の子と心中する道を選んだのではないかと思いました 堕ろすことも出来なくてやりたい映画も女だからって頓挫できない どちらも大事 この時代いったん休んでまた復帰なんて都合のいい時代はまだ訪れてなく昨今なら選択肢があったはずと悔やまれます
めぐみさんのセリフ「若松孝二にヤイバを突き付けないと···」これ意図したことなのか結果なのか 映画よりもリアルなヤイバを突き付けたことになったと思います
作中に三島由紀夫自殺の話題 その時の若松監督は死んだら何もできないのにな…と話しました めぐみさんにも同じ言葉を果たしてかけたのでしょうか…
めぐみさんの苦悩は痛いほど伝わりました 時代に殺されたようなものです
細い針で刺されたような痛みが胸に残りました 男にはなれなかった女性 止まっても生きていていいんだよと伝えたかったです
そしてここまで書いてみて やっぱりタイトルはアイロニー 皮肉ってことで私の中では落ち着くのでした
追記 2018 9/7
この作品 若松プロ「再始動の第一作」と知りました
「止められるか、俺たちを」は映画の中だけではなくそこから飛び出し
今、この時に響もす雄叫びだったのですね
若松監督とめぐみさんや通り過ぎてきた仲間の想いを乗せて ひとつになり続いていく
遅くなりましたが このことに気がついた今日ブワーッと鳥肌が立ちました
想いはつづく 何度でも
やっとタイトルの本当の意味を受けとれた気がしています(勝手な解釈)
再始動 おめでとうございます!