「見慣れた世界が歪んで見える。コメディだけど怖い。」軽い男じゃないのよ Hisaさんの映画レビュー(感想・評価)
見慣れた世界が歪んで見える。コメディだけど怖い。
多分、こういう反応は一般的ではないのだろうけど、私はこの映画のラストでショックすぎて涙がでた。
自分は取り立てて、フェミニストっていうわけではないとは思う。
ラテンの国にも長く住んで、女性性を見せつけるかのような女性たち、
女性に口笛をふく男性たちをたくさん見てきた。
それに対して特に嫌悪も覚えていなかった。
アメリカでは女性は比較的対等に仕事をしているように思えるが、
それでも実は男性が、男らしくあらねばというプレッシャーは、日本より強いかもしれない。
仕事の場でも、まずは、外見の美しさや若さに対する感想を口に出されること。
常に脱毛やプッシュアップ下着などで外見を整えることを義務化されること。
ある年頃になってシングルだと親からのプレッシャーがすごいこと。
好きな人から性の奉仕者として扱われること。
そしてそれに甘んじてしまう自分。
片方がsexで満足すれば、もう片方が満足してなくても、勝手に終わってしまうこと。
仕事をやめ、経済力をなくし、家庭の中で立場が弱くなること。
好きなファッションをするとゲイだと思われること。
同じだけの権利を主張すると、すぐエキセントリックな運動家だと思われること。
一人でバーで飲んでいると、たちまちガラの悪い異性につかまって、セックスに利用されること。
男性であれ女性であれ、そんなことがあって良いわけない。
良いわけないのだ。
でもこれは全て、私たちの日常で、ごく当たり前に行われていることだ。
最初は脱毛したり、お尻にプッシュアップのパッドを入れる主人公が面白くて笑って見ていた。
しかし最後ー元の世界に戻ってみると、今まで見慣れた世界がなんと歪んで見えることか。
消費される性。
私たちはこんなにおかしな世界に住んでいたのかと、絶望的な気持ちになった。
救いは、彼女が、彼と一緒にこの世界にきたこと。
前途多難だけど、両方の世界を知る二人だからこそ、同等の権利と幸福を追求できる、新しい関係を築いて行って欲しい。
絶望的な願いではあるけれど。