劇場公開日 2019年11月15日

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「役者は良いが物語が雑過ぎる」影踏み andhyphenさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5役者は良いが物語が雑過ぎる

2019年11月27日
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鑑賞方法:映画館

山崎まさよしはデビュー前、歌手のオーディションに行ったつもりでギター担いで上京したら役者のオーディションで、仕方がないので弾き語りして帰ってきた、という面白エピソードを持つ人物である。昔、エッセイだかで読んだ。Wikipediaによればそれはキティ・レコードとキティ・フィルムを間違えて、気づいたら最終審査だったという事らしい。なぜ気づかなかったんだ...。しかしまあ、彼の存在感は役者としていけると思われたのだろう。
そんな山崎まさよしが「8月のクリスマス」以来の映画主演を飾ったのが本作「影踏み」。しかも監督は彼の俳優デビュー作「月とキャベツ」の篠原哲雄。篠原監督にとっても「月とキャベツ」は長編デビュー作。あれから20うん年を経ての再タッグである。(短編はあるが)
「月とキャベツ」ではそのまんまミュージシャンの役で、圧倒的な「One more time, One more chance」の弾き語りで私を号泣させたまさやんだが、今回は泥棒である。とはいえ、やはり専業の俳優ではない(つか彼は近年ほぼ俳優活動をしていない)ので、やはり台詞回しは昔と同じくやや心許ない。しかしその圧倒的な存在感(泥棒なのに!)は健在である。あと、やはり年齢を重ねたのか表情が多彩になっている。伊達に連ドラの主演こなしてないな。21年前だけど。
しかし、個々の演技はよくても脚本展開には首を捻らざるを得ない。原作は横山秀夫なので、未読だがそんなに雑なミステリーを書くはずがない。だから、きっと、連作短編を無理くり一本の物語にした弊害が出たんじゃないかなと思う。要するに、纏めるには長過ぎたものを削ったり足したりした結果、肝心のミステリーが意味不明なのだ。
田中洋次の説明図ひとつで語られる人間関係。竹原ピストル使ってるのにどんな人間だかさっぱり分からないのは何故だ。冒頭の語りさせたかっただけじゃねえの。中村ゆりが中途半端過ぎ。もっとキーパーソンぽく描いてやって。あと真相が雑過ぎ。中抜きし過ぎ。伏線があからさま。2時間ドラマかよ!
...ふう。
物語に突っ込みたい点が多過ぎる。個々の役者は良い演技してるのに展開が雑で...。
あと滝藤賢一の無駄遣いが過ぎる。もっと描き込んでやって欲しい。オチがあれでは滝藤賢一の演技力が浮かばれないではないか...。
「映像化不可能といわれた原作」というのが売りだが、そこのくだりの映像化はクリアしていると思う(気付くのが遅過ぎて歯軋りした)。しかしなあ、ミステリー映画がミステリー雑にしちゃダメだよ...。
先述の通り、山崎まさよしはじめ個々の演技は良いのだ。最初硬いかな、と思った北村匠海も凄くいいし、彼の演技で泣ける。尾野真千子は安定し過ぎだし(ただしまさやんとオノマチは10歳差だと知っているので複雑だった)、「月とキャベツ」からお越しの鶴見辰吾も良い味出してる。大竹しのぶなんて出番あれだけしかないのに強烈だ。しかし無駄遣いが過ぎる。
ミステリーという前提をきっちり踏んだ物語づくりであれば、もっと輝ける映画になった筈だ。でも、まさやんはまた映画に出てほしい。20年後だとおじいちゃん映画になりそうだが、それでも。

andhyphen