劇場公開日 2019年3月1日

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「キャスティングが微妙」九月の恋と出会うまで 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0キャスティングが微妙

2019年3月9日
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鑑賞方法:映画館

 川口春奈はかなりの美人なのに、表情が乏しいせいか、失礼な言い方だがあまり華がないように感じてしまう。可愛くないし色気もない。この人よりも容貌では見劣るかもしれない女優さんでも、表情豊かであればそれなりのコケットリーはある。
 本作品と同じように高橋一生がややエキセントリックな役を演じた映画「嘘を愛する女」では相手役を長澤まさみが務めたが、演技力が優れているとは思えない長澤でも、今回の川口よりはかなりマシだった。
 川口春奈がまったく駄目ということでもないが、アップの多い本作品では女優力がものをいう。もう少し演技力があって表情にバリエーションのある女優さんが演じたら、ちょっとは作品に奥行きが出たのではないかと思う。

 タイムパラドックスはタイムマシンと並んで様々なジャンルのSFで扱われた古典的なテーマである。もっとも有名なのは相対性理論の説明で紹介された双子のパラドックスである。ご存知ない方のために簡単に解説すると、相対性理論では定数はCで表される光の速度だけで、時間も空間も変数である。物体の速度が光速の9割になると、時間の経過が半分になる。双子のひとりがその速度で20年間宇宙旅行をして帰ってくると、残っていたほうは40年歳を取っているという話である。この他には本作で紹介された親子のパラドックスなどがあるが、いずれも解決はない。熱力学第二法則が示すようにマクロの現象はすべて不可逆である。過去には戻れないのだ。
 しかしタイムマシンの本当のテーマは過去に戻れるかどうかではなく、過去から見た現在、現在から見た過去がそれぞれ肯定できるかどうかである。人は未来に不安を感じ、現在に苦痛と恐怖を覚えたとき、誰でも過去を振り返る。あのときああすればよかった、こう言えばよかった、そうすれば・・・。

 本作品はタイムパラドックスを舞台にした、小ぢんまりとした恋愛劇である。だがヒロインの性格まで小ぢんまりとすることはなかった。相手役の平野に拮抗できるくらい癖の強いヒロインであれば、作品の印象も違っていたと思う。

耶馬英彦