「笑いの裏側にある笑えないロシア」スターリンの葬送狂騒曲 とえさんの映画レビュー(感想・評価)
笑いの裏側にある笑えないロシア
面白かった〜
かつてのソ連や、現在のロシア政権への皮肉がたっぷりと込められたブラックコメディ
5分に一回ぐらいの間隔で笑った映画だった
1953年
それまで、恐怖政治でソ連を統治していた書記長スターリンが死亡。
最高幹部たちは「次の統治者の座」を巡り、争奪戦を繰り広げる…
そもそも、スターリンは「暗殺リスト」に従って、毎晩のように気に入らない人たちを殺し、その恐怖で国民を服従させていた書記長だった
そのスターリンが亡くなった途端、党の最高幹部たちは、権力争い、縄張り争いを始める
それまで、スターリンに言われるままに処刑を実行していた政治家のベリヤは、不当に拘束された囚人を釈放して国民からの点数稼ぎをしたり
次の書記長の座を虎視眈々と狙うフルシチョフは、道化を演じつつ反ベリヤの勢力を集めたり
そんな彼らの動きは、まるでマフィアやヤクザの跡目争いそのもの
「これは、国を統治している幹部の話だよねぇ…」
と、何度思ったことか
しかし、残された彼らもスターリンの恐怖政治にうんざりしながらも、
結局のところ「邪魔者は殺せ」というスタイルは一貫して変わらない
そのロシアの悪しき体質は、現代にまで引き継がれ、プーチンの時代になっても変わらない
そのプーチン政権から逃れ、イギリスに潜伏していたスパイが殺された事件があったが、
この映画は、そのイギリスで作られた作品だ。
そこには製作者の
「ロシアは政権を批判したら殺される国だ」
という強いメッセージを感じる
その結果、この映画がロシアで上映禁止になったことを考えると、そのメッセージは現政権に届いたようだ
「邪魔者は殺せ」という「恐怖政治」はスターリンの時代から始まり、そのスタイルを変え、表向きは多少ソフトにはなりながらも、今もロシアの中で生きている
それを笑いを交えながら語るこの映画はすごいなと思った
そこは、さすがブラックジョークが大好きなイギリスらしい
周辺国からしたら、笑えない話だろうに…
観る前は、スターリンのことをあまり知らず、ついていけるか心配だったけど、知らなくても十分楽しめる作品だと思う
それと、この邦題の「スターリンの葬送狂騒曲」はすごくピッタリだと思った
そのままズバリのタイトルだと思う