クレアのカメラのレビュー・感想・評価
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解雇の謎・・
実際のカンヌ映画祭の合間を縫って撮ったと言う離れ業のような短編です。ですからストーリー自体はシンプルで、映画会社に勤めるヒロインの突然の解雇から始まって復職までのエピソード。
解雇の正当な理由も告げられないので観客は謎に惹かれて見入りますし、カフェの店先に横たわる犬を撫でるシーンはハリウッドの脚本入門にあるSave the Catの法則同様、ヒロインの優しい心根が伝わります、この辺は海外で学んだホン・サンス監督の正統派ぶりを感じます。
劇中のソ監督の不倫が発端というプロットはホン監督と主演のキム・ミニさんの実際の関係をいじっているような自虐ネタですね。
アメリカ留学時代に同い年のチョン夫人と結婚した監督が22歳も年下のキムさんと出来てしまって離婚騒動中と知ると白けます、もっともホン監督は私の映画は未青年には不向き、ある程度年を経ないと理解できないとインタビューで言っていますからとんだ確信犯、劇中でホットパンツ姿の彼女を説教するセリフはまるで父親のような所有欲丸出しでした。
ヒロインへの思い入れを淡々と描く名手といえば岩井美学と称される岩井俊二監督が思い浮かびますがホン監督も同類なのかもしれませんね。
タイトルなし(ネタバレ)
映画会社勤務のマニはカンヌ映画祭に参加している最中に突然上司から解雇を言い渡される。格安チケットでの出張だったのでフライト変更もままならずしょうがなく海岸をブラブラしていたところをフランス人のクレアに声をかけられて意気投合。クレアは音楽教師で詩人で写真撮影が趣味のおばさん。クレアは自分がシャッターを切ると映っている人が別人になると信じている変わった人でマニやマニの上司、マニと付き合っていた映画監督達の写真を撮ってみせるが・・・。
それぞれの主演作『お嬢さん』と『ELLE エル』のプロモーションでカンヌに来ていたキム・ミニとイザベル・ユペールとたった数日で撮ったというだけあって、ギリギリ映画の範疇に入る素朴にも程がある作品。適当なズームや計算も何もなさげなカットが逆に2人の魅力をぐっと引き立てていてものすごくキュートな映画になっています。イザベル・ユペールのリラックスし切った演技も素晴らしいですが、キム・ミニの美しさも印象的。彼女の作品は『泣く男』しか観ていませんでしたが、昔の松嶋菜々子を思わせる繊細な佇まいに胸が痛くなりました。
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