「たとえ舞台がカンヌでも、カメラに映るのは唯一無二のホン・サンス世界」クレアのカメラ ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
たとえ舞台がカンヌでも、カメラに映るのは唯一無二のホン・サンス世界
奇才ホン・サンスのフットワークの軽さと、平凡な日常をヒョイと飛び越える職人技を見せつけられた思いがする。そもそも映画祭期間中、カンヌで名女優イザベル・ユペールまで引っ張り出して、これほど適度に力の抜けた「世にも奇妙な物語」的なプロットにまとめ上げるのだから、もう誰もこの人には敵わない。ユペールもユペールで、大女優ぶったところが全くなく、こういう役をサラリと演じきるところに凄さがある。
「撮るとその人の人生を変えてしまう」というカメラの存在は、何よりもカメラ(写真、映画に限らず)の力を知るホン・サンスならではの着眼点。彼は自らの視座で作品ごとに俳優(というより、女優)を様々なキャラクターへ変貌させてきた張本人でもある。その意味でホン・サンスは劇中の監督のようでもあり、はたまたカメラを構えるユペールのようでもあり。ともあれ観ているとジワジワ惹きこまれ、異界の魅力から抜けられなくなる一作だ。
コメントする