「見るべきはエイミーのウザいほどの自信過剰」アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
見るべきはエイミーのウザいほどの自信過剰
予告編が本当に上手にできていたので、とても見たいと思っていたのですが、正直、予告だけで全部わかっちゃうつくりの映画でした。なので、あえて見るとするなら、主演のエイミー・シューマーのウザい自信家っぷり。
もしも、彼女の身に何の変化も起きずに、初めからただの自信過剰なのだとしたら、とんだ勘違い女が、美しい自分にオトコが群がるさまを楽しそうにあしらうだけのつまらない映画にしかならない。
ここで、仮定の話として、彼女じゃないほかの誰かが演じたと考えてみる。そう、例えば、アン・ハサウェイとか、ジェニファー・アニストンあたりが。
もともと美人なのだから、魔法がかかって「自分が美人になった」と確信するさまは、とても嫌味で見ていられないものになるだろうし、魔法が解けて「もとのブサイクに戻った」としても美人のままなのだから説得力がない。
さらにもう一段階深く考察して、実際に別人が演じたとしたら?『私はラブ・リーガル』のように。それとも、自信を失ってデブになった『アベンジャーズ エンドゲーム』におけるソーのように、ブサイクのときだけ特殊スーツを着込んで本当に変身したとしたら?どれも今まで見たことのある、「よくあるコメディ」
に過ぎない。新味がない。
この映画が、画期的なのは、外見的に何も変わってないのに、変身できたと勘違いできた愚かな女性を巧みに演じて見せる点だ。
見どころは、エイミーが見せる美人の振る舞い。スリムビューティーはかくもはた迷惑でわがままな存在。たとえ誰かが本当のことを指摘したとしてもどこ吹く風で気にならない。だって、真の美しさを手に入れたと確信できたんだから。と、心の底から思っていることだ。これには誰も勝てない。どこまでも自分に都合よく勘違いできる自分大好きっぷりの、滑稽さに尽きる。あえて言うなら、裸の王様を発展させたような展開の面白さが見事だ。
特に、ビキニコンテストに飛び入りして過剰なサービスでギャラリーを熱狂させるセクシーショットは、いわゆる「美」としての概念を痛烈に皮肉ってみせる。「世の美人さんたち、あなたたちがやっていることって、実はとても恥ずかしくてカッコ悪いことなのよ?気づいてた?」とばかりに。
それがあるから、最後まで飽きずに見ていられる。もちろん魔法が解けたあと、彼女がたどる運命も興味深い。良質のコメディーだったと思う。
2019.11.6