「既存の価値観から抜け出せないアメリカ映画」アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
既存の価値観から抜け出せないアメリカ映画
アメリカンジョークが好きな人にはいいが、ピントが合わない人にはこの映画は面白く感じられないだろう。場合によっては不快に感じる人もいるかもしれない。少し無理があるのだ。
デブや老け顔をコンプレックスに感じる女性はいるだろう。いるどころか、世界中のダイエット市場を考えれば、先進国のほとんどの若い女性がデブでありたくないと考えているに違いない。
この映画は予告編のとおり、頭を打って自分が美しく生まれ変わったと勘違いした女性の話で、その段階ですでに、デブでブスは女性としての価値が低いという偏見を前提にしていることがわかる。その後の展開は、コカコーラのコマーシャルと大差ない。ドラッグストアに入ろうとして追い出された小汚い老人にコーラを与える親切な青年、その後この老人が実はサンタクロースだったという落ちのテレビCFである。
アメリカ人というのはどうやら、既成の権威や価値観に縋らないと生きていけない国民性のようだ。アメリカンドリームは価値観の創造ではなく、常に既存の価値観の中での高評価の獲得であり、高額の経済的な成功である。
本作品もその構図から1ミリもはみ出さない、典型的なアメリカ映画で、登場人物の全員が痛々しく感じられる。こういう価値観の束縛からアメリカ国民が解脱できる日は来るのだろうか。
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