「五七五にうまくまとめている川柳的タイトル」母さんがどんなに僕を嫌いでも kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
五七五にうまくまとめている川柳的タイトル
虐待をどんなに受けてる子供でも、やっぱりお母さんは好き。これがまた華のある綺麗なお母さんであれば尚更だ。主人公タイジが小学生になり、さすがにスープをかけられるくらいにまで壮絶な仕打ちを食らうと、ちょっと距離を置いてしまうところがリアル。肥満児だからと言って施設に1年間入れられるとなると、さすがにお母さんだって子供が愛おしくなるはずだ・・・と思っていたら、帰ってみるとお母さんは旦那と離婚していた!
児童虐待などの社会問題を取り上げているようでもあり、それ以上に精神的な虐待、母子愛の欠如、身勝手な母親役をこれでもかこれでもかと観客に投げかけてくる。17歳になると、勝手に精神科を受診して、それすらも母親から詰られた上に包丁を突き付けられたタイジ。ようやく家を出る決意をすることとなる。
血の繋がった親子の究極の愛とでもいうべきか。この軸だけで考えると、『万引き家族』なんかとは真逆の家族愛。会社や劇団を通じて知り合った友達が皆いいやつなので、このまま楽しく過ごすという手もあったのに、キミツ(森崎ウィン)の家訓を聞かされ、見返りを求めない無償の愛を貫く道を選択するのだ。いや、これはなかなかできることじゃない!
終盤は再婚した母が莫大な借金まで相続してしまったことから、彼女に自己破産宣告をさせようと努力するタイジ。料理という絆で結ばれていた母子だったから、「一緒に小料理屋をやろう」と誘うのだ。仕事で不正をしたことも、DNAを受け継いでるのだと納得する様子。自分と同じ深層の性格を持つのなら、「生まなきゃよかった」ことも何か理由があるはずだ。何度も堕胎しようと思った事実を告げられたときには、「生んでくれてありがとう」という気持ちになっていく。
何か所も泣けるポイントがあったのですが、キミツ、大将(白石隼也)、カナ(秋月三佳)に虐待の事実がバレてしまったときの彼らの優しさには泣けた。人の痛みを知ることが相手を理解する近道なのでしょうね。