ザ・ビッグハウスのレビュー・感想・評価
全7件を表示
観察映画
6月頭に渋谷で観ました。
観察映画というジャンルで、映画内では価値を提示はしておらず、観てる人に委ねられます。何せ、事実を映しているだけなので。
もちろん編集はされてるので、その編集にある価値観は表現されてますが・・なので、多少の予備知識があった方が理解が深まるかな?とは思います。
ミシガン州にあるミシガン大学のアメフトが開催される競技場。
そのスタジアムの通称が「ビッグハウス」。
その中で始まるアメフトの試合の、どちらかと言うと、それを支えている裏方の人たちに焦点が当てたドキュメンタリー。
私は想田監督の映画は「選挙」以来2本目ですけど、「観察映画」という新しいジャンルの映画は結構好きですね。押し付けがましい価値観が出てこない分、観てる人の価値観がそのまま感想に反映される。
今のアメリカのトランプ大統領が誕生した土壌を、私ははっきりと感じ取れました。
これがアメリカ人の日常(祭り)なのか・・日本人にはとても真似できないな、これは。良い意味でも悪い意味でも。。
仮にアメリカに旅行に行くとしても、たぶんミシガンは行かないと思うので(笑)、映画でもその祭りの風景の一旦に触れることができたのが、貴重な体験でした。
大学の凄さ
このスタジアムは大学のらしいし、試合も大学のチーム。
しかし、この動員、規模、すごいね!
アメリカの小説に大学対抗のフットボール試合を観に行くデート、典型的なアメリカ人の祝祭的な娯楽、そのスケール感が実感できた。
This is America
第8弾の観察映画は、予想外の舞台、アメリカ。
図らずも?アメリカの業の深淵さをまざまざと映し出していた。
百聞は一見にしかずというけれど、観察映画は百見くらいさせてくれる感じ。
バカデカイだけのスタジアムかと思いきや、そのデカさを支えるだけの、とんでもなく深い地元民の愛情と熱狂に支えられた奇跡のような存在であることがよくわかる。
地元民の誇りであり祭りの場である BIG HOUSE は 宗教、スポーツ、大学、政治、人種問題、軍事、すべてが混沌と混ざり合って存在している。
観客だけでも11万人を超える人々が集合している様、それだけでも圧倒されるのだけども、対比して映し出される1人1人のスタッフ、観客を観ていると、なおのこと11万人という人生の膨大さと重さを感じて、なぜか涙が出た。宇宙の莫大な広さを知ったときのような。
愛国心、愛校心、宗教、といったものが社会を構築する上でいかに重要な機能を果たしているかをまざまざと見た。
普段であれば誰もが否定しえない美談や道徳心といったものが、多視点から覗くことで薄っぺらいショービジネスにしか見えなくなる。(もちろん美談を語る本人は素晴らしい人物であろうことを前提にしつつも)
スポーツの魅力と面白さ、場の巨大さに興奮&圧倒されつつ、それゆえの恐ろしさも、それだけではなさそうな裏方の風景も一度に感じられる。今回もとても面白い経験でした。
これが“今”のアメリカ
ニューヨークやカリフォルニアのような先進的な大都市が耳目を引きがちではあるが、それはアメリカの極一部、むしろ特殊な部分に過ぎない。アメリカを構成するほとんどは保守的な地方だ。これは“消え行く古き良きアメリカ”ではなく、都市のきらびやかさの影でどっこい生き続けているアメリカの真の姿なのだ。国歌の歌詞から伺える建国の理念からして戦争を是としてる事、学生のフットボールゲームが軍隊のシステムと変わらない事、白人だらけのスタジアムに対し、スタジアム外、スタジアムの裏で働く黒人等々、見えてくる事が沢山ある。心して見てほしい。今のアメリカが凝縮されている。
過去の遺産
アメリカ合衆国は人種のるつぼと聞いているが、この作品の中では白人以外の人種はほぼ存在しないに等しい。もっと言うと、白人男性以外はほぼ存在しないに等しい。つまり、「ザ・ビッグハウス」は、古き良き「白人男性優位主義」を記録した作品である。
ありとあらゆるところがマッチョで、あらゆるものがビッグサイズ。消費する量は半端ない。白人女性はバービー人形の様な衣装で、アフリカ系の女性は底辺労働だ。そしてスポーツは一大ビッグビジネス。敗戦後の我が国が目指した国の縮図がこの「ザ・ビッグハウス」なのだろうか。これから葬り去られようとしている過去の遺産を目にできるかと思います。
全7件を表示