「ここまで壊しにきたか」空母いぶき お"お"ぉ"ん”さんの映画レビュー(感想・評価)
ここまで壊しにきたか
楽しみにしてたんですが、評価は「ひどい」の一言ですね・・・
原作貶しが、本当に酷いです。原作者は劇場版をキチンと監修したのでしょうか。よく上映できましたね、これ。
ひとまず観てきてウンザリしたことを10点ほど以下に羅列します。
1.中国に野心はないという特殊設定
この空母いぶきの世界は現実とは異なるパラレルワールドです。中国が存在しますが、中国は尖閣諸島に野心を燃やしていないことになってます。中国の脅威には一切触れないのです。現実の脅威である中国に配慮し、ここに目を瞑らないと映画化はできなかったのでしょう。とても悔しいです。
2.配慮の末にねつ造した「謎の国」の設定が雑すぎる
中国は脅威ではないとなると、日本はなぜ空母が必要なの?となります。その答えとして、この映画では尖閣を狙う別の勢力が南に沸いたことにしています。現実には存在しない、戦わせても誰にも文句を言われない好都合な敵を、ねつ造したのです。急ごしらえで設定されたため、現実味がなく、設定には粗が目立ちます。
謎の国のリアリティについては、多くは語りませんが、「ありえない」のオンパレードです。
3.旭日旗隠し
空母いぶきを含むすべての艦艇は、旭日旗を見せません。海軍の習慣法を殺したと言えましょう。
4.垂水首相≒安倍首相?
垂水首相は原作とは違い、トイレから登場します。別のシーンでは水筒を持っています。「腹痛を理由に雲隠れ!」となじられてた時期の安倍首相の特徴と被せてあるのが伺えますが、このあたりが政権風刺のために難病を揶揄したと問題にされ、この映画を矮小化させています。
原作の空母いぶきにはない問題を、佐藤浩市氏は自らの信念によって持ち込んでしまったと言えましょう。
5.守るべき日常の描写がわざとらしい
コンビニのシーンがちょいちょい戦闘シーンの合間にはさまります。自衛隊が守っている日常を描写したかったのは理解できますが、ものすごく冗長かつ、わざとらしい。作品のテンポを大きく削ぎ落としています。
6.ところで君は誰?
壮々たるメンツである名俳優たちを、惜しげ無く無駄遣いしています。登場人物が何故か原作よりも多くなっており、艦内のシーンは安いセットを誤魔化すために、原作よりも暗く見せているので「えっと、この人は誰だっけ」となってしまいました。
7.捕虜を暴れさせる自由を認める特殊設定
日本人は自衛隊員まで平和ボケしてるという特殊設定があります。捕虜の扱いが優しすぎたことで捕虜が暴れ周り、味方が亡くなるシーンがあります。最後にはそれすら、友愛の心で許してしまいます。
8.艦内自由行動を許可する特殊設定
民間人の記者が艦内で動き回って活躍します。自由に取材して、好きに動きます。機密の固まりであるはずの艦内で、です。
9.空母いぶき艦隊は課題解決においてチョイ役
最後には空母いぶきから発せられたSNSが感動を全世界に伝え、国連軍が重い腰を上げて助け舟を出してくれるという特殊設定を採用しています。あれ、いつから亡国のイージスに切り替わったんだ?
自衛隊員の努力や、たぐいまれな戦闘技術、戦争を回避するための苦労により、大事にならないうちに国連軍が動いてくれました。ハッピーエンド!
空母いぶきは、戦争に発展させない状態のまま耐えて、国連軍が動いてくれるまで戦闘してりゃあ、それで良かったのです。ぶっちゃけチョイ役扱いです。
例えるなら、「あ、兄貴ぃ!助けに来てくれたんッスね!頼もしいや!オイラ、なんとか持ちこたえやしたぜ・・・」的な役割の子が、この映画のタイトルやってる感じですね。
10.中国は助けに来てくれるという特殊設定
中国の描写は、尖閣諸島に野心を持ってないクリーンな中国という特殊設定だけに飽きたらず、日本を助けてくれる国連軍の一国として描かれています。二重の配慮ととれましょう。そこまでしないと映画化出来なかったのでしょう。とても悔しいです。
これらのことを全てひっくるめ、「ひどい」と評価します。