ともしびのレビュー・感想・評価
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静けさの中に、名女優ランプリングのミステリアスな目線が突き刺さる
この映画はなかなか手強い。ミステリアスな映画というべきか。ひねくれた映画ではないのだけれど、全く手の内を見せてくれないので、観客はこれがどのようなジャンルに位置付けられるものなのか判断がつきにくい。それはひとえにこの女優、シャーロット・ランプリングの佇まいが成せるものでもある。彼女がただ物憂げに佇んでいるだけで、その内面に様々な心象模様が渦を巻いているのがひしひしと伝わってくる。それだけでなくこの名女優は、よりによって市民講座の演劇クラスに参加する中年女性を演じているのである。
本作には説明的な箇所が一つもない。全ては状況や表情から察するしかない。そうやって察しているうちに、我々はいつしか彼女が何を考え、どのような末路を歩もうとしているのか、何かしらの決意、そして近い未来すら察してしまった気がしてドキリとさせられる。つくづく静けさの中に、恐ろしいほどの得体の知れなさを秘めた映画である。
全然美しくないベルギーの町
そもそもここの舞台がベルギーって言うのも全然わからない。
終わり近くでクジラが打ち上がったニュースを子どもの母親が新聞を読んで聞かせる地名がオーステンドっていうので(それも検索してやっと)、ベルギーとわかった訳で。
フランス語に聞こえるしフランスだと思っていた。
でもこの女優さんはイギリスの人で、こんなにフランス語って話せるものなんだ、と別のところで感心した。
上手か下手かなんてもちろんわからない。
わからないというのはもう この映画が全く不親切極まりなく、少しでも見逃すともうさっぱり糸口を逃す。
しかも、ワザとそのキーポイントを映さない。
警察に行くのも留置場にいるのもまして逮捕も裁判もなくていったいどこに行ってるのか、見る前の説明を読んでなければ全然わからない。
あまりにもわからないから監督のコメントを探してみたら
主役のこの女性の生き方自体に焦点当てたくて、そこがブレるからわざと明らかにしなかった、とあった。
ヨーロッパもアメリカも、児童に対する性的な虐待は厳しい。
息子にもこの父はそうしていたのが、留置場の面会で知れる。
息子はでは母親をもなぜそこまで憎むか。
それは多分、この母が自分の夫の性癖を多少はわかっていたのにそれに気付こうとしなかったから、としか思いつくことは出来ない。
初っ端の奇妙な叫び声も
(突然でびっくりする)
自分を解放するとかナントカのセラピーかと思っていたら演劇学校だというので、へえええ、とこの女性の行動力にいちいち驚く。
プールにも会員となって通ってるし。
その更衣室での着替えのシーンは衝撃的で
話の重要なポイントは全然見せないくせにこういうのは遠慮会釈もなく映し出すのだ。
しかしこのプールの更衣室の薄暗さ古さは、最近の日本人なら抵抗ある人は多いと思う。
プールもなんだか清潔感ないと言うか、入りたい気持ちにはさっぱりならない。
あれってもしかしたら温水か?
ヨーロッパではお風呂屋さんのような感じで水着着て入るところがあると聞いた気がする。
じゃなければ屋外でプールは緯度的に相当無理がある。
もしかしたらここは東欧のどこかなのか?と思ったのはクジラの浜の奥の建物。
東ドイツやチェコあたりの元共産圏の国にみられる建物だ。
ヨーロッパでは移民対策として貧困層用にああいった集合住宅がある。
(こう言うのを見るにつけ政府の移民受け入れの体制には注意が必要であると切に思う。
映画の筋とは離れるが、移民は確実に治安を悪くし民度を著しく下げる。まして日本政府は移民含め外国籍の者に手厚い保護をしようとしているし選挙権も渡そうという団体もある。イギリスなどはイギリス人以外は税制的にも将来の保証的にもかなり厳しい。国民皆無料の医療システムもそれを受けるためには多額の費用を支払う)
ベルギーも本来は美しい町なのだろうと勝手に思うが(行ったことないので)、この映画では殺伐とした風景しか出て来ない。
それがもう このシワシワのおばあさんと相俟って
気分は暗澹。
カサブランカの花の柱頭や花粉をむしって取り除いているのは花を保たせるためなのだろうか。
私も間も無くこの彼女のような年齢に達し、夫とも死別し、似たような境遇になるのだろうけれど、
今のところこの彼女に対する共感は、幸いにも1ミリも湧かなかった。
原題は「アンナ」
ファーストシーンの奇声で度肝を抜かれ、何がなんだか
と思うまにエンドロールした一回目の鑑賞。2どめで、やっとこの主人公の抱えた問題が理解できた。
アンナが孫の誕生日にケーキを抱え地下鉄に乗ったとき、同乗の若い女が、恋人らしき人物に浴びせる言葉がまさにアンナの心情に重なっていたのではないか。
人は誰でも一つの出会いで人生が変わっていく。
それを悔いて自分の時間を返してくれと言ったところで、虚しいだけ。不可能とわかりながらも、そう叫ばずにいられない人生はとても悲しいものだろう。
あの魅力に溢れたブルーアイをしたシャーロット、カモシカのような足でスレンダーボディのシャーロット、若い頃のシャーロットを知っている人にとってはとても痛々しい映画。
でも老いた自分をさらけだして演じる俳優魂は尊敬しかない。人は必ず老いていく、人生を体現してくれたシャーロットの潔い生き方に大拍手!
配信に慣れてしまった私が悪い
配信映画に慣れきって舐めきった見方をした自分が悪かったです。すみません(映画に謝る)
仕事の昼休みにスマホで3日かけて見る映画ではありませんでした…
いつか時間のある時にもう一度見ます
テネットと同じく回文になった名前HANNAH
与えられた情報量の少なさから、アンナの日常を事細かにチェックしなければならない。多分実年齢と同じ70歳くらいの役柄だろうか、行動力だけみるとそれほど衰えてもいない。
演劇クラブ、ジムのプール、そしてエレーナと盲目の息子のいる豪邸での家政婦、自宅では愛犬フィンとの生活というルーチンとなった日常生活。しかし、夫は何かの罪で刑務所へと収監されることとなり、年齢的にも一緒に暮らせない仲となりつつある。
結局はその罪のおかげで息子ミシェルからも嫌われ、孫のシャルリーとも会えなくなってしまった。おそらくは夫が死ぬまで疎遠となることだろう。映画の中では愛する孫、家政婦先の盲目の二コラ、そして多分夫の被害者である子どもニコラという3人の幼き子どもの対比。プラスして、アパートの階上に住むやんちゃな子どもまでいる。
徐々に生活にも綻びが見え始める様子が痛々しい。ジムの会員証が無効となり、地下鉄での名も知らぬ青年のパフォーマンスを見つめるアンナ、打ち上げられたクジラの無残な姿、すべてが虚無感に満ちてくるのです。さらには愛犬家としては泣けてくるような・・・
そんな悲しみに包まれる人生のともしびとも言える時間と空間ではあったけど、小学校での楽し気なシャルリーを遠くから見守ったり、家政婦先のエレーヌの輝きにも幸せを見出している気もした。人生の終焉、それでも幸せに余生を送りたい。何か希望が見いだせれば・・・と、そう遠くない自分に置き換えてもみた。
【老境を迎えた夫婦に起きた事。独りになったアンナは、どのように生きたのか・・。】
ー序盤から、ラストまで観客に与えられる情報は極めて少ない。-
・アンナの夫は何らかの罪を犯し、収監される。そして、アンナは愛犬フィンに”あの人は帰って来ない・・”と告げる。
ー途中の、扉越しの被害者の子供の母親の声。朧気ながら、アンナの夫が犯した罪が透けて見える。-
・アンナは、息子と孫に会いにケーキを焼いて持っていくが、庭先で息子から拒絶される。トイレで激しく嗚咽するアンナ。
―その後、面会した夫と息子には大きな確執があることも、示される。-
・一人で静かに過ごすアンナ。市民プールに泳ぎに行くが、職員から”この会員証はもう、無効です‥。”と告げられる。
―彼女を取り巻く、閉塞感が凄い。-
・愛犬のフィンを譲り、正装しするアンナ。いつものように、演劇学校に行くが、途中で演じられなくなり、”外の空気を吸う”と言い、部屋をでる。
そして、地下鉄の長い階段を早足で降りるアンナ。
ー物凄い緊張感。アンナの思いつめた表情。そして、地下鉄が近づいてくる・・。-
<数少ない情報のみ、観客に与えつつ、老境のアンナが置かれた状況を表す手法。それにこたえるかのような、アンナを演じるシャーロット・ランプリングの深い哀しみを湛えた表情。
ラストの彼女の行動をどう見るかは、観客次第であろう。>
ランプリング・ショー
主人公(シャーロット・ランプリング)はベルギーで夫と暮らしていたが、夫に召喚状が届き、出頭するとそのまま収監されてしまう。
主人公は日常生活のルーチンを頑なに守ろうとするが、次第に破綻していく。
息子に拒絶されたときの慟哭は胸に突き刺さる。
ミステリードラマ…?
ミステリードラマって何?ミステリーとは違うの?予告編とかポスターとか、ちょっと面白そうと思って観に行ってみたんだけど、ちっとも分からなかった。全然、ミステリーじゃなかった。何かがあって、夫は刑務所らしきところに入るんだけど、何をしたのか明かされない。刑務所らしきところが、本当に刑務所だったのかも分からない。劇団みたいなところで、演劇してるみたいなシーンもあるけど、何をしてるのか分からない。子供らしき人に拒否されているんだけれども、その理由も分からない。分からないづくしの映画でした。こんなにセリフのない映画も初めてかも…。個人的には、フランス映画って、セリフが少ないものが多い気はすると思うけど。おかげで、分からないことだらけでした。でも、この女優さんの演技は素晴らしかったと思います。主演女優賞を受賞したってあったけど、セリフが少ない分、感情の表現は難しかったと思うんですよね。どうでもいいことなんですが…フランスも電話に出た時は、ハローって言うんですね。ちょっと意外でした。
ともさない、ともらない、ともしてもらえない話
三部作にしたかったから、この邦題か…
「生き直しの物語」って言ってなかったっけ?逝き直しなのか?死んだように生きてるオンナが生き直す事にも挫折する話だった....
ちょっとだけ肯定的に考えると、川端文学をフランス映画にした、みたいな。ま、無理くり感、あり過ぎだけど。この空気感も、たまには良いかなと思いましたが、お勧めできる「映画」ではありませんでした。
辛い現実を見て見ぬふりをした罪
これは、ちょっとゾッとする話だった
主人公のアンナ(シャーロット・ランプリング)は、夫と二人で慎ましい生活を送っていた
しかし、ある日、夫が刑務所に収監されてしまう…
この世には、賃金が出ない仕事に「主婦業」や「母親業」がある
常に、自宅を家族が過ごしやすく、快適な状態にしておくのが、その仕事だ
そして、まじめな人であればあるほど、常にキチンとした家にしておくことに注意を払っている
この映画の主人公アンナも、キチンと整えられたベッドや、アイロンをかけられたシャツを見れば、真面目なお母さんなんだなということがわかる
*
夫が刑務所に入った時もそうだった
無事に夫を送り届け、その後も、いつもと変わらない日を過ごしていた
つまり、アンナからしたら「ちょっと夫は事情があって留守にしているだけ」のことであり、それ以外のことは、いつも通り主婦業をこなしていこうと考えていた
孫の誕生日にはケーキを焼き、夫が可愛がっていた犬の面倒をみて、仕事も今まで通り続ける
しかし、それでは世間が許してくれないということに気づいてしまうのだ
世間の人から見たら、妻は夫の共犯者でしかない
どんなにその現実から目を逸らして、今までと変わらない日常を過ごそうと思っても、そういうわけにはいかないのだ
そんなアンナの状況を象徴しているのが、 砂浜に打ち上げられたクジラだ
クジラは、いつものように海の中を泳いでいただけなのに、なぜか、砂浜に打ち上げられ、そこでジワジワと朽ち果てていくのを待つだけになってしまった
アンナも、いつも通り、真面目に毎日を過ごしていただけなのに、いつの間にか、ひとりぼっちになってしまった
しかし、それでも人生は続くのだ
その心境の中で迎えたラストシーンには、ドキドキしてしまった
本当なら、もっと泣き叫んでも良かったし、夫を見捨てることもできたはず
しかし、それをしなかったのは、彼女が主婦業を全うしたからだと思った
今まで通り夫を信じ、変わらない日常を過ごそうと思ったのだ
しかし、その真面目な性格が災いして、多くの物を失ってしまう
もしも、彼女に罪があるとするならば、それは「現実から目を背けた罪」だと思う
クジラが浅瀬で泳いでいることに気づかず、砂浜に打ち上げられてしまうように、現実から目を背けていると、いつの間にか一人ぼっちになってしまうのだ
これは、アンナだけに起きることではなくて、おそらく、多くの家庭で起き得ることで、だからこそ、なんだかゾッとしてしまう話だった
さすが、シャーロット・ランプリングのリアリティだった
主演の女優さんが凄い!
年老いてから、夫が刑務所に収監され、一人の生活を余儀なくされる女性の日常を描いている。正直に言うと、よくわからない(男性として理解できない)部分もあるが、大変さだけは伝わる。
何より、周りの人も出てくるが、実質的には「一人芝居」。それも、所作と表情で、彼女を取り巻く状況や感情(悲しさ、辛さ、頑張ろうという覚悟など)を表現している。凄い!
よくわからなくとも観るに値する。
日常の軋む音。
「なんだか凄いもの観たなぁ…」が、最初の印象。色んなものを極力排除して研磨し続け、それでも鈍く光るなにか。
そんな「なにか」を老女の日常を介して、ただただ映し出す。映画的な美しさ満載の画面から漂う不穏さは、日常生活にある様々な音(こうして耳にすると不快)と共に、何かが少しだけズレた世界へと我々を誘う。地下鉄の変圧器の音と共に、暫く頭のなかに残りそうだ。
これぞ大女優!
ほんの少しの台詞さえも余計なのでは?と思わせるシャーロット・ランプリングの演技力。彼女とこの映画の監督の「文句なんか言わせねぇぇよ!」みたいな気概がビシビシ伝わってくる作品。
全てを語らずこうなんだろうな…と想像しながらシャーロット・ランプリングの表情・目線を追っていく。かといって全然疲れない。逆に彼女の佇まいに魅了された。
ラストは心がざわざわします。
映画は省略の美学
興行的に考えてみても、間違いなく日本では作れない映画だ。会話もなく、音楽もなく、何の説明もないおばちゃんの日常を淡々と追うだけ。おまけに精気もなく、眼つきは険しく、肉体はしわがれているシャーロット・ランプリングという被写体をさらし続ける。着替えのシーンをこれでもかと見せてくるが、むしろ目をそむけたくなるんだよな。あなたも老いればこうなるんですよ、若い頃にあれだけ美しかったこの人でさえも、と訴えているよう。そうだ、あの背中は、打ち上げられたクジラに見えてきたんだった。アンナの日常は、老いの境地に惑う、ゆれるともしびなのか。
ともすれば、「さざなみ」の後日談とでも解釈できそうな気もする。退屈でたまらない人は絶対にいるだろうが、我が身を重ねて嗚咽する人も必ずいるだろうな、この映画。
映画を観終わった後、
極力説明を排除した物語なのは、きっと、多くの人に多かれ少なかれ、特に年齢のいった人には似たような経験や境遇があると考えたからではないだろうか。
セリフも少なく、音楽もない。
街に活気も感じられず、地下鉄には怒りが溢れ、 灰色の空は重苦しさを募らせる、
そして、余計だと思われるものを削ぎ落として、削ぎ落として、アンナの表情や佇まいを静かに追いかける。
映画を観ている間中、アンナの心の動きに注意を払い、解答らしきものはないか、探して、想像して、追いかけてしまう。
こうして映画はエンディングを迎えるが…、そして…、映画を観終わった余韻の後に、自分や、自分の周りの人々、そして自分の未来を想像して、胸が苦しくなるのを感じる。
僕は、アンナは、自分の余計な荷物を整理しながらも、強く再び生きて行くのではないかと期待している。
アンナの強い表情に、孤独に向かう強さを感じる。
最後の場面で、打ちあげられたクジラの死骸を思い出し、もしかしたら、アンナは死に向かうのではないかとハッとさせられたが、そうではなかったから。
2019年ベストムービー!
原題は『Hannah』、女性主人公の名前。邦題は今ひとつよく分からないタイトル。予告編も良くなかった(笑)
ストーリーはややミステリー仕立ての人間物語。"なにがあったのか?"は語られず、映画はそのまま終わる…主演のシャーロット・ランプリングの演技でただただ"みせる"…こんな映画、日本では撮れないでしょうね(笑)
今年最も見応えのある映画だった。
全24件中、1~20件目を表示