ペンギン・ハイウェイのレビュー・感想・評価
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Boy meets Wonder (ボーイ・ミーツ・ワンダー)
※コメント欄に「〈海〉とは何か」「ペンギンとお姉さんの役割」「作中で明らかにされていないこと(人間に理解できない領域)」を追記しました。(2018/08/26)
個人的には細田守監督の『時をかける少女』を初めて観たとき以上の衝撃を受け、大いに感動いたしました。レビューにもついつい熱が入り、かなりの長文になってしまっています。
そこで、なんとか少しでも読みやすいレビューになればと思い、ここに各章の表題とキーワードを一覧にしてまとめました。
➀『ペンギン・ハイウェイ』はよく分からない?
──人間が理解できる領域と、人間に理解できない領域
➁アオヤマ君は“謎”とどう向き合うか
──アオヤマ君は「科学の子」
➂物語終盤、アオヤマ君は何を決断したか
──理解することの悲しみを知る
➃ラストシーンをあらためて見る
──「ぼくは会いに行きます」
元々は「原作小説との比較:『映像化』と『再構成』」という章をレビュー本文に含めるつもりだったのですが、独立して読める内容になっていますし、何より本文があまりに長くなっていますので、そちらはコメント欄の方に載せています。
また、みなさんのレビューを読んでいて、「結局、〈海〉とかペンギンとかお姉さんって何なの?」とか「謎が残ったままでモヤモヤする」といった感想が多いように感じましたので、映画と小説から読み取れることと、作中で明らかにされていないことを、私なりに整理してまとめ、コメント欄に追記しました。全編ネタバレ全開ですので、コメント欄をご覧になる際はご注意ください。
➀『ペンギン・ハイウェイ』はよく分からない?
まずは、「よく分からない」とか「難解」とも評される、本作の“分かりにくさ”について考えてみたいと思います。
この映画の内容をひとことで言い表すなら「小学4年生の男の子が、人智を超えた不思議に出会う話」です。ここで言う“人智を超えた不思議”とは、住宅地に突如として現れたペンギンたちであり、森を抜けた先の平原に浮かぶ謎の球体〈海〉であり、そして、歯科医院で働くおっぱいの大きなお姉さんです。
また、本作は子どもたちの胸躍るような冒険を描いたジュブナイルでもありますし、主人公アオヤマ君の初恋の物語(ボーイ・ミーツ・ガール(?))でもあります。言ってしまえば、この作品自体が作中に登場するペンギンのような存在なのだと思います。つまり、見た目は可愛らしいジュブナイルのようであっても、その中身は一筋縄ではいかないSFなのです。
ペンギンや〈海〉やお姉さんが投げかける謎は、作中で全てが解き明かされる訳ではありません。アオヤマ君がいくら聡明であるとは言っても、小学生の男の子にあっさり全貌を解明されてしまうようでは、本当の意味での“人智を超えた不思議”ではありませんから。
原作者の森見登美彦さんがおっしゃっているように、本作は「人間が理解できる領域と、人間に理解できない領域の境界線を描いて」います。つまり作中には「人間に理解できない領域」が明確に出てくるのです。そこに戸惑いを感じる方もたくさんいらっしゃるようですが、本来理解しようがないものにこだわっても仕方がありません。
重要なのは、「アオヤマ君がそれらの謎とどう向き合い、その果てにどのような決断をしたか」です。そこに注目することで、本作を少なくとも“物語として”読み解くことはできると思います。
➁アオヤマ君は“謎”とどう向き合うか
お姉さんの言葉を借りるならば、アオヤマ君は「科学の子」です。ペンギンや〈海〉やお姉さんが投げかける謎に対して、彼は科学者として、対象をよく観察し、集めた情報を元に仮説を立て、実験を行い、それらをノートに記録しながら、一歩ずつ着実に謎の核心に迫っていきます。つまり、どれだけ問題が大きく深遠なものであっても、決して思考を止めずに、科学的に探究し続けるのです。
例えば、お姉さんの投げたコーラの缶がペンギンに“変身”するという不可思議な現象を目にしても、アオヤマ君は冷静にその発生条件を調べようと実験を行い、その結果、日光がペンギンの発生条件であることを突きとめます。このような謎を解明していくプロセスこそ、SFの醍醐味だと思いますし、そこにはアオヤマ君の科学的な態度がよく表れていると思います。
※これ以降、物語終盤や結末部分の内容にふれています。重要なネタバレを含みますので、ご注意ください。
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➂物語終盤、アオヤマ君は何を決断したか
物語の終盤、アオヤマ君はついに“エウレカ”に至りますが、この瞬間に彼は、〈海〉とは何か、ペンギンとお姉さんの役割、そして自分が何をすべきかを理解したのでしょう。おそらく、その行動の結果、“お姉さんを失うことになる”ということも含めて。
お姉さんが“人間ではない”ということを反証するため、自らの身体を犠牲にして断食実験を行ったことからも、アオヤマ君にとってそれが到底受け入れられない事実だったということは想像に難くありません。しかし、最終的に彼は決断し、限りなく拡大を続ける〈海〉を消すため、喫茶店にいるお姉さんに会いに行きます。それは、自らの手でお姉さんを消してしまうことと等しいのです。
パンフレット内のレビューで、SF翻訳家の大森望さんが、序盤に出てくる抜歯の場面は身体的な痛みを伴うイニシエーションであると指摘されていますが、ここでのアオヤマ君の決断は、喪失という痛みを伴う精神的なイニシエーションであると言えます。アオヤマ君は、お姉さんを自らの選択によって失うことで、「理解することの悲しみ」を知るのです。
本作のエピローグに「世界の果てを見るのはかなしいことかもしれない」というアオヤマ君のセリフが出てきます。これまで、「探究し、理解し、知ることの喜びと可能性」を描いてきた本作ですが、その果てにアオヤマ君が理解することの悲しみを知るというのは、なんとも皮肉な結末だと思います。
➃ラストシーンをあらためて見る
ここまで、アオヤマ君が「人智を超えた不思議とどう向き合い、その果てにどのような決断をしたか」を詳しく見てきました。それを踏まえた上で、あらためてラストシーンを見てみましょう。
「ぼくが大人になるまでに……」という冒頭とほぼ同じ内容のモノローグにはじまり、彼が世界の果てを目指していること、世界の果てに通じている道はペンギン・ハイウェイであること、もう一度お姉さんに会えると信じていることなどが語られます。
──そう、彼はまだ探究することを止めていない。探究することに絶望していないのです。むしろ、お姉さんにもう一度会うため、以前よりもずっと大きな目標に向かって探究を続ける決意を語っているのです。
「ぼくは会いに行きます」
お姉さんとの別れ際にアオヤマ君が言ったこの言葉を、私は信じたいと思います。彼なら本当に世界の果てまで行き、お姉さんに会えるはずだと。人智を超えた不思議に対しても科学的な態度を貫き、理解することの悲しみを知ってもなお、それを乗り越えて探究を続けようとする彼なら、きっと。
ラストカットでアオヤマ君の目に映る探査船「ペンギン号」が、彼を後押ししているようで、彼が進む道(ペンギン・ハイウェイ)の正しさを証明しているようで、胸に熱いものがこみ上げてきます。なんと希望に満ちた結末なのでしょうか。
ペンギン・ハイウェイを見つけに行こ
森見登美彦さんの作品は、何冊か読んでいるのですが、本作は未読で、映画化を楽しみにしてました。
一言では、言い表せない、友情、初恋、学園、SF、ファンタジーなどのいろんな要素がてんこ盛りの作品。森見作品ならそれもあり。
でも、一番のテーマは少年アオヤマ君の成長…、それがペンギンハイウェイなのかな…。
どちらかといえば、大人向けの内容だと思いますが、それでも、
ペンギンは何だったの❓
うみは何を表してたの❓
お姉さんの正体は❓
などなど、観終わっても❓が残り、スッキリとはしませんでした。
その分、アオヤマ君のひと夏の成長は、とても爽やかに伝わってきました。
お姉さんのオッパイは、アオヤマ君でなくても、男の子ならみんな憧れます(笑)
原作、また読んでみようと思います。
ペンギンがかわいいから そんな動機でもいい
そんな動機でもいいから見てほしい、
幸せな映画でした。
ネタバレあるかもしれないです。
もう一度言います。ネタバレあるかもしれないです。
まっさらな気持ちで見たい方はレビューなんて見ないと思いますが!
絶対嫌な方はUターンで!
以下
低評価レビューもあるにはある。でも好きな人はどストレートに好きな作品でしょう。原作未読な私ですが、大好きで愛おしいものとなりました。
主題歌は宇多田ヒカルのGood Night。
「謎解きは終わらない」という歌詞があります。
まさにその通り、謎解きは終わらない!
謎が謎を呼びさらに謎を呼ぶ…、この作品を好きじゃないという人は「結局何が何だかわからないじゃないか!」と思ってる人が多いんじゃないでしょうか?
小学4年生の青山くん。頭が良くて、だからこそ少し気取っていて、でも優しい良い子。どこかにいるかもしれないありえなくはない男の子です。
覚えていますか?この映画はSF。ファンタジーなのです。感情移入はしてもしなくてもいい。結局わからないことがあるじゃないか?ファンタジーだもの、それでいいじゃない。
全てに説明がつく必要はない。そう考えられる方にはこの映画を見て楽しめると思います。
森見先生作なのでお世辞にも子供向けではありませんが、子供は子供で「ペンギンかわいい〜」と楽しめるものだと思いますよ。とにかくかわいい。ふんだんにかわいいシーンがあります。
青山くんの一夏は、幸せで楽しくて、儚いから、少し切なくもあります。ほろりと涙が出ました。
しかし、鑑賞後のあなたは幸せに満ち溢れることでしょう。
私なんてエスカレーターを7階分軽やかに駆け下りちゃいましたから。笑
最後まで読んでいただきありがとうございました!
子供向け風大人アニメ
夏休みに相応しいファンタジーのような科学映画
かがくときくと、化学とか物理とか理論という言葉に直結されて
SFとなると、私達の理論体系によって解釈された少し異なる世界になる。
その理論が整然としてないと、ファンタジーにされてしまう。
でも、"科学"って、そうじゃないよね。を思い出せてくれました。
おっぱいからファンタジーなペンギンまで、様々な不思議な事象について
思考を放棄せず、問題と認識して、根気強く実験と観察を繰り返して、結果の獲得を試みる。
科学によって、立ち向かっていきます。
もしこの映画がファンタジーなら
魔法使いのようなお姉さんに恋をして、お姉さんは何かと戦い身を犠牲にした。
とても理不尽で悲しい物語になったでしょう。
でも、科学的立場を貫くことによって、エウレカして、
仮説を獲得して、ありのままに事象を受け入れていく。
それは、起きてる事象にはなんの影響もないですし、
もの悲しい気持ちが残ったこともかわりません。
じゃあ、科学に意味はなかったのでしょうか。
そうではありません。
科学による獲得があったからこそ、彼は学校を飛び出しました。
そして、お姉さんとのお別れと、事象を観察する機会を得たのです。
悲しくはありますが、理不尽では無くなったのです。
仮説の先には希望も残されてるようで、探査船の帰還がそれを象徴付けます。
あまり考えちゃいけないと思ってたおっぱいとか。
理論整然とはしてないファンタジー的な事象も、
研究できるのです。科学できるんです。
そんなことを考えていたら、夏休みの自由研究を思い出して、夏らしいなあ。と感じました。
森見登美彦作品らしい不思議な世界観&超良質なアニメーション
鑑賞直後で、うまくレビューには書けない気が…。
とにかく、すごく大好きな作品。
不思議で素敵で心地よい空気感の続く傑作といっていい作品ではないでしょうか。『カメラを止めるな!』を観た後はこの作品もオススメです!
宮崎駿のようなテーマ的な重さというか重厚さや多層性にはまだ及ばないですが、ポストジブリは細田監督や新海誠監督ではなく、石田監督に期待したいと強く思いました。
とりあえず、鑑賞して印象に残ったところをパラパラと。
石田監督の短編作品『フミコの告白』から一貫した絵に命が宿り躍動する、アニメーションの運動の喜び。
キャラクター達の魅力。
お姉さんの色気と魅力、主人公と仲間達の可愛らしさ、2人のお父さんのかっこよさ。
ペンギンの動きや猫、賢い子供たちの夏休みの研究、ディテールへの愛おしさ。
お父さんの教えのメモや蔵書による演出をもう一度観て確認したい。
赤瀬川原平の缶の中に閉じ込めた世界など、美大出身の監督だからか、直接質問したり聞いてみたいこともいくつかあった。
奈良県が舞台とのことだけど、常滑の焼酎瓶が並ぶ道があった。本当にある場所なのかな。
知多半島出身監督の石田さんと作画の柴山さんの遊び心か?
繋がりがわかりづらいところもあるけれど、原作を読んだり繰り返しみたらわかるかもしれないから、その点は保留。
世界観が不思議過ぎて、ちょっとついていけなかった
・お姉さんの魅力に終始引き込まれた
・映像がキレイ
・世界観が不思議過ぎてちょっとついていけなかった
・伝えたいテーマは謎の解明では無いのでしょうけど、モヤモヤ感は拭えない
傑作
原作が大好きなので最初は映画を観るつもりはありませんでしたが評判が良いのとお姉さんの声優が蒼井優さんでしたので鑑賞してきました。
結果観てよかったと思いました。ラストのペンギンハイウェイの疾走シーンは爽快で感動しました。初めてこの小説を読んだ時のようなわくわく感。そしてラストはやはり切なくとても良いシーンでしたし映画オリジナルのラストもとても良かったと思います。
ファーストシーンからときめいた! ペンギンのいるシュールな風景から...
現代版星の王子さま
見て良かったです。
清涼感たっぷりの映画
この夏に見た作品の中では突出!
数年前に原作既読。
森見登美彦さんの作品はこれまでいくつか読んだことがあったのですが、癖が強くあまり好きではありませんでした。
しかし、この小説は何故か心に残りました。
そして映画化されるということで、楽しみにしていました。
仕事で見に行くタイミングがないなと諦めていたので、他の方のレビューにひと通り目を通しました。
すると、さらに見てみたい!という気持ちが強まりました。
そして、見に行って大正解だと思いました。
頭の中の世界は無限だな、想像を膨らませるのって、やっぱり楽しいなと痛感しました。
人には理解されない領域がある、いや きっとあった。
そんなことを思い出させてくれた作品でした。
夏休みに見ることができたというのも大きかったです。
"海"は少年の探求心の塊か
見終わった後の感想は、これまで感じたことのない感情だった。
見終わると自然に涙が流れた。
非常に良い映画だった。アニメーション自体は普通だったが、原作がここまで完成されているとよい映画になるものかと感じた。
この映画は、少年とお姉さんのひと夏のストーリーである。
探求心旺盛な少年は、いろいろなことに興味を持ち、「研究」を始める。その姿が妙に大人びており、微笑ましい。
ISSの模型を作ったりしていたのも良かった。(個人的)
お姉さんはまぁ典型的なお姉さんなのだが、少年からするとそれも研究対象であり、恋に近いものを感じている。
ストーリーは一貫して現実離れしている。ペンギンが住宅街に現れたり、変な生物が生まれたり。少年はそれらを「研究」し、ラストには答えを見つける。
少年の、あきらめない精神、大人に近づいていく姿、真実を知ってしまった後悔、それと現実離れした映像とが絡み合って何か感情的になってしまったのだろうか。
お姉さんと別れることになるだろうと気づいていたが、気持ちを抑えて「研究」に没頭する姿に感情移入したのだろうか。
お姉さんの声は蒼井優なのだが、このチョイスが完璧であり、お姉さん感がひしひしと感じられる。
小学校のころ、私自身いろいろなことに興味を持ち、ノートに書いていたことを思い出した。
時代設定はそれよりも現代ではあるが、あえてそれを感じさせず、昔のことを思い出せる、懐かしさもどことなく感じることができた。
最後に、鳥やペンギンが好きだから見たわけではないことを付け加えておきます。笑
今が旬のアニメ映画
冒険ファンタジーをメインとした、主人公アオヤマくんとお姉さんの淡くせつない恋を描いた青春夏物映画。ペンギンを生み出す能力に目覚めたお姉さんとそれを研究する小学生アオヤマくんから始まり、アオヤマくんの友達であるウチダくんやハマモトさんを交えながら物語は展開していく。
内容も単純にして分かりやすく、構成も至ってシンプルなのがいい。しかし、物語のほとんどを異世界描写に割いているため感動を与えるのには十分でない映画だ。だが全体的な感想として、少し背伸びしているアオヤマくんと彼が憧れているお姉さんの甘酸っぱい夏の恋模様は印象的であろう。理ではなく感じるままに楽しめる映画なのだ。
総合して、童心に帰るような楽しげでどこか寂しい夏要素をふんだんに取り入れた作品である。この季節にぴったりであるから興味があればぜひ映画館に足を運んではどうだろうか。
面白いかな( ̄▽ ̄;)
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